過去には、NHK「Music Japan」に出演した「Yogee New Waves」などを輩出している「バンドサークルのための音楽フェス」である“SOUND YOUTH”。このイベントは、音楽好きな大学生が集まり、大学生バンドシーンを盛り上げるために開催されるコンテスト形式の音楽フェスである。全国のバンドサークルから選りすぐりのバンドが集まり、バンドサークルNO.1を競いながらバンドやサークル同士の交流を深めていくのである。

 SOUND YOUTHはこれまでに3度開催されているが、今回はスピンオフイベントが下北沢ERAにて開催された。Live Landでは今回「SOUND YOUTHの同窓会」と銘打って1~3回大会に出場したバンドと運営スタッフが集結したイベント“Re;union”についてお伝えする。

1.RiNGO TONE(日本医科大学Popular Music研究会)

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 Re;unionのトップバッターを務めたのはSOUND YOUTH第3回のグランプリ受賞バンド、RiNGO TONE(リンゴトーン)。Ba.とGt.&Vo.の西野真史・剛史は双子の兄弟であり、Dr.の樋口真一郎を加え3ピースとして活動するバンドである。

 Gt.&Vo.西野剛史の伸びやかでMr.Childrenを彷彿とさせるような歌声がまず印象的で、観る人全てを惹きつける。そして観客は、第3回大会の個人優秀者にベース部門で選ばれた西野真史の心地よいベースラインによって、RiNGO TONEの世界へ深く引き込まれる。MCでは第3回大会の裏話も披露された。Dr.の樋口が決勝当日に高熱を出してしまい、バンドのトレードマークであるリンゴのTシャツも忘れてしまうほどの状態で出場したのだという。

 「そんな中でも優勝させて頂きました!」と勝者の言葉で笑いをとり、会場の雰囲気を柔らかいものに変える余裕を見せ、ジャジーな「君とアイロニー」や、爽やかな「ハートビート」など、彼らのバンドの特徴でもある楽曲の多彩な引き出しを存分に披露したライブであった。

セットリスト

1.Today

2.君とアイロニー

3.虹色のまくら

4.ハートビート

5.赤い妖怪

2.マリモキウチ(東京大学FGA)

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 第2回大会出場バンド“marimyde”のGt.&Vo.で、特別個人賞受賞者である木内まりものソロバンドが2番手として登場。marimydeの解散後はソロ「マリモキウチ」として活動を続け、マリモキウチとしても第3回大会に出場している。マリモキウチの特徴は何と言ってもその歌唱力。可愛らしい容姿も相まって意表を突かれるようなその力強い歌声は、数多のバンドの中から彼女が「選ばれしシンガー」であることも納得だと言える。

 「いわゆる“シンガーソングライター”としては見られたくないんです」と語るマリモキウチは彼女自身が作詞作曲を手掛けた曲を、完成度の高いバンドサウンドとして次々に繰り出していた。共演者の中から「今日一番上手いギター」という声も聞こえたGt.三木雄輝のプレイを、Ba.明石昌夫とDr.高橋伽耶の安定したリズム隊が支えることでバンド全体の良さを引き立てていた。

 盤石のサポート陣のもと、マリモキウチは2曲目の「アンドロメダ」では幅広い音域で艶のある歌声を披露し、3曲目にはmarimyde時代からの楽曲である「わるいくせ」を続けた。彼女のギターカッティングと、跳ね上がるようなファルセットが印象的なこの曲によって一気に会場は熱を帯びた。最後は「KANA-BOONを意識してみた」という四つ打ちのポップな「MUSIC MUSIC」で、観客に「マリモキウチ」の名を再度強く印象付けたライブを締めくくった。

 ちなみに、RiNGO TONEとはSOUND YOUTHをきっかけに何度か対バンをする間柄になったという。先につながるバンドコンテストとしてもSOUND YOUTHはバンドにいい影響を与えているのである。

1.トケル

2.アンドロメダ

3.わるいくせ

4.22時と缶コーヒー

5.ヘッドホン

6.MUSIC MUSIC

3.THE NUGGETS(千葉商科大学R&R帝国)

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 第1回大会出場バンドであるTHE NUGGETS。このSOUND YOUTH出場を足掛かりに飛躍を遂げ、南は九州から北は北海道まで全国ツアーを行い、去年の7月には初の全国版ミニアルバム『Here Come THE NUGGETS~ザ・ナゲッツ登場』をリリースした。

 「日本のリヴァプール」、「心のラスベガス」千葉県船橋市からライブではなく「ショー」で全国に愛を届けるロックンロールバンドTHE NUGGETSが、一回り大きくなってこの日SOUND YOUTH・Re;unionのステージに戻ってきたのである。THE NUGGETSは「船橋のエルヴィス・プレスリー」ことVo.工藤わたるの観る者を魅了するステージングがこのバンドの唯一無二の個性を生んでいる。ステージでは己の声のみで基本楽器は演奏しないが、全ての楽器を扱い作詞作曲をフロントマンの工藤わたるが手掛けている。

 Ba.大牟田徹による渋い語りで登場した工藤はその存在感とひたむきに熱い歌声で観る者を惹きつけはじめる。当初THE NUGGETSの放つ男らしさに及び腰であったオーディエンスも、大牟田、工藤、Gt.西山浩喜が繰り出す息の合ったラインダンスによって笑いや歓声を上げるようになった。見逃してはならないのは、平然とパフォーマンスをする余裕があるTHE NUGGETSの演奏力はとても高いということだ。

思わずこぶしを突き上げて叫びたくなる「レッツゴー」、「ぶっ飛ばしてやろうぜ!」と男らしさの詰まった曲である「タランティーノの映画のように」、Johnny B.Goodeの曲を彷彿とさせるような「もう一度ツイストを」と、ノリのよい楽曲が続き、会場は工藤わたるのダンスステップ一つで湧き上がるようになった。

 そして、「俺のおごりだ!」では、ステージ上から工藤が姿を消したと思いきや、エルヴィス・プレスリーと彼しか似合わないようなコスチュームに着替えてフロアに出てきた工藤がオーディエンスに酒を振る舞い、女性に花を贈った。メンバー全員が21歳という驚愕の事実も明かされたのだが、21歳の行いではないと言えるだろう。下北沢ERAの盛り上がりが最高潮に達する中、THE NUGGETSは最後に愛のメッセージソング「いいぜ」で「在りのままが美しい」と熱く歌い上げ、この日一番の熱狂を見せたショーに幕を下ろした。

セットリスト

1.わたるon STAGE

2.レッツゴー

3.タランティーノの映画のように

4.もう一度ツイストを

5.俺のおごりだ!

6.いいぜ

4.ninja beats(早稲田大学SILS MUSIC CLUB)

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 「ウクレレ&ヒューマンビートボックス」という異色の組み合わせで音楽を奏でるninja beatsはSOUND YOUTH第2回大会のファイナリスト。ウクレレのShinとビートボックスのYuyaによるこのユニットはアメリカでのストリートライブなど、世界を股にかけての活動を経て、世界最大のバンドコンテストである「エマージェンザ2015」の日本大会・世界大会にて優勝を飾ったという、出世度でいえばSOUND YOUTH史上No.1バンド間違いなしの実績を重ねている。

 ninja beatsの音楽はShinのウクレレとYuyaのビートボックスを、その場で録音しそれを繰り返し流す「ルーパー」という技術によって全て生演奏の上、見事なライブ感を演出している。ギターとはまた異なるウクレレ特有の軽妙なリズムと高音が、主にベース音を奏でリズムを生むビートボックスと相まって、クールでダンサブルな空間をつくり出す。

 1曲目の「Get Up」ではYuyaのラップも見せ場の一つである。ルーパーを駆使することで2人だけで奏でているはずの音楽が何層にも重なった厚みのある音になる。ビートボックスやラップをしながら手元ではルーパーやイコライザーの操作を行うYuyaの技量の高さ、従来のウクレレのイメージが覆される程のShinのテクニカルなウクレレプレイは圧倒的だ。2曲目は彼らの代表曲とも言える「Hanabi」。日本の夏の風景を想起させるようなShinのウクレレの情緒的なコード感は、曲の後半になるにつれて躍動的になっていく。

 3曲目の「Japanism」はサポートに三味線奏者の澤田響紀が加わり、日本的で独創性の高いninja beatsの音楽が一段階レベルアップする。テンポの速い三味線とウクレレの共演は、会場に新たな熱を生んでいった。「やばい」「すごい」の声が聞こえるようになる頃には、身体を揺らす人や飛び跳ねる人が大多数を占めていた。4曲目では三味線に代わりボーカルが登場。サークルの後輩でもあるサポートVo.のYuikoが「tearless」で透明感のある歌声をビートとウクレレに乗せ、ninja beatsの違う魅力を伝える。Yuikoによれば、数多くある早稲田大学のバンドサークルの中でもSILS MUSIC CLUBは一風変わった音楽のできるサークルとのことで、SILS MUSIC CLUBならではの空気感がninja beatsを培った一面もあるのかもしれない。

 5曲目は再度澤田響紀が登場、Yuikoもステージに残り4人で現在のninja beatsの集大成「ZEN」を演奏した。今後はヨーロッパ各地でのツアーも行う予定とのことで、「日本」を意識しながら、世界に通用する音楽を創っていく意思表示とも、自信の表れとも言えるような圧巻のパフォーマンスであった。

セットリスト

1. Get Up

2. Hanabi

3. Japanism

4. tearless

5. ZEN

5.256(明治大学Woody Club)

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 Re;unionのトリを務めるのは256(ニーゴーロク)。第2回大会のファイナリストで、その際は予選でも本選でもトップバッターを務めたことを「もう1年半くらい前のことなのかな?」と懐かしむように語った。256はSOUND YOUTHにおいて最もカッコいいパフォーマンスをしたバンドに贈られる「ARTribe賞」を獲得。その特典で「東京の空」のPVを再制作することとなった。その再生回数も1万5千回を軽く超え、各地ライブでも着実に動員を重ねている現在注目のバンドである。

 Gt.&Vo.の池田光のハイトーンボイスによって歌われる詞は等身大でどこか淡く切なく、聴く者に沁み入ってくる。それでいて曲調は彼らの言葉を借りるなら「シティーポップ」。洗練された演奏によってあくまでポップに、親しみやすい音楽を奏でている。

 1曲目の「past TIME」はまさに256の音楽を表している。「手と手と手と手を交わした」「まだまだまだまだ」と繰り返すサビが印象的なこの曲は聴き手も覚えやすくすぐにノることができるくらいにポップだ。そして2曲目にタイトル未定の新曲を披露。躍動的にハイフレットをかき鳴らすGt.草野仁の存在感も256にとって重要だ。

 そして3曲目には「東京の空」。観客は待ってましたとばかりに歓声を上げ、それに応えるような熱いパフォーマンスを256は見せる。爽やかでポップでありながら曲の展開は複雑で、かつ何度も聴きたくなるというバランス感、本人達も観客もこの曲を推す意味が分かるだろう。

 4曲目には「よくライブでやる」という定番曲「目的地」。ライブ特有の疾走感もありながら、曲中何度もキメが気持ちよく決まるのはBa.本庄拓也、Dr.中嶋将大の安定感によるものだろう。草野の弾くメロディーも馴染みやすい曲だ。そして、最後の曲には「さよなら」。哀しみ漂うスローテンポなこの曲は夕暮れ時のようなオレンジ色の照明のもとで、充実の「同窓会イベント」の終わりを告げる曲となった。

セットリスト

1.past TIME

2.タイトル未定

3.東京の空

4.目的地

5.さよなら

「SOUND YOUTH 2016」開催決定!!

 今年で4回目の開催となるバンドサークルのための音楽フェスSOUND YOUTHの開催決定がRe;unionにて発表された。

 SOUND YOUTHは音楽であればジャンルは不問。王道のロックはもちろんジャズやパンク、クラシックや引き語り、ラップなどなんでもOK。また、オリジナル楽曲だけでなくコピー楽曲も歓迎している。過去大会ではコピーを演奏し決勝にコマを進めたサークルもある。

 今回このRe;unionに戻ってきたバンドは、SOUND YOUTH出場をそれぞれ良い経験を積んだ、転機となった時として捉えてそれぞれに飛躍を遂げている。活動の場を広げたいバンド、あるいはSOUND YOUTHを足掛かりにこれから本格的な活動をしたいと思うバンド、どのようなバンドにも扉は開かれている。

 SOUND YOUTHでは、新年度が始まるにあたって新規学生スタッフの募集も行っている。学生のうちに大きなことをしたい。社会で役立つ知識を身につけたい。そのようなやる気と責任感のある方を歓迎しているとのこと。興味のある方は下記Twitterやメールアドレスから連絡を。

 

SOUND YOUTH公式HP

「SOUND YOUTH 2016」詳細

[予選日程]:2016年8月8日~12日・15日~19日(予定)

[予選会場]:下北沢ERA〔8日・15日~19日〕&下北沢WAVER〔9日~12日〕(予定)

[決勝日程]:2016年9月中旬(予定)

[決勝会場]:TSUTAYA O-EAST

お問い合わせ

Mail: soundyouthjp@gmail.com