2006年に経営破たんしたアメリカの大手レコードチェーン店Tower Recordsの繁栄と衰退を記録したドキュメンタリー映画「ALL THINGS MUST PASS」が10月に米国で公開される。日本では今でも各地で大型店舗を構え「No Music No Life」のキャッチフレーズ、黄色いロゴ入り袋、そして「タワレコ」の愛称で親しまれているタワーレコードであるが、本国アメリカには既に存在しない。かつてはミュージック・ビジネスの象徴の一つであった米Tower Recordsは、ファンだけでなく数多くのミュージシャンにも思い出の場所であった。劇中にもエルトン・ジョンをはじめ数多くのゲストが登場し、思い出を語っている。
日本でもCDの売り上げ減が叫ばれて久しいが、アメリカでは更に深刻だ。元々、日本ではレコード、CDは帯や解説、特典などが豊富でコレクションとして扱われる事が多いが、アメリカではマニアを除けば、基本的に消耗品扱いだ。今でこそ輸入盤でも歌詞カードや解説付きが普通になっているが、一昔前は見開きのペラペラのジャケットが一枚入っているだけ。歌詞カード無しが普通だった。価格も安いが作りも安っぽい。音楽が聴ければそれで良いという感覚の中で、より手軽で価格が安いネットダウンロードに消費者がシフトしていくスピードも日本の比ではなかった。勿論、違法ダウンロードという闇の部分も見過ごせない。
店に足を運んで、お気に入りのCDを探す。あるいは知識豊富なマニアな店員と会話をし、新しいバンドを探す。そんな一昔前のCDショップの風景を懐かしみながらも、現代の潮流では生き残っていけなかった事を必然として映画いている。「ALL THINGS MUST PASS」は日本語で言えば’諸行無常’だ。ミュージック・ビジネスも例外ではない。
今のところ日本での公開は未定の様だ。「タワレコ」が生き残っている日本では少し拙いテーマだろうが、逆に日本のタワレコが先陣を切ってプロモーションしたら大きな話題となるかもしれない。英語版であるが、エルトンなどの著名ミュージシャンが登場するトレーラーはYouTubeで公開中だ。