ロジャー・ウォーターズ(Roger Waters)、かつてPINK FLOYDの頭脳と呼ばれた男が、そのデビュー50周年という記念すべき年に「Amused to Death(死滅遊戯)」以来、実に25年ぶりとなるオリジナル・スタジオ・アルバム「Is This the Life We Really Want?」をリリースする。近年は「The Wall tour」を始め大規模なワールド・ツアーを精力的に行ってきたロジャーだが、新曲という点では、断片的にシングル曲をリリースする程度で、アルバム制作はいつになるやら?という思いで、待ちこがれたファンも多かったはずだ。
アルバム・リリースに先立ち、先行リリースされた数曲を聴くだけで、そこにあるのは、紛れもなくロジャー・ウォーターズ・サウンドである事は確信できた。BOSTON以上にトレンドとは無縁の音楽性、キャッチーなメロディも派手なアレンジもない、PINK FLOYDの「THE WALL」の頃から続く、ロジャーだけが作り上げる事ができる(そしてロジャーだから許される)独特のサウンドだ。しかも、PINK FLOYDにはデヴィッド・ギルモア、そして、ソロ・アルバムでもエリック・クラプトンやジェフ・ベックといった超一流のギタリストが、アルバムに本格的に参加する形で、ロジャーと対等とも言える存在感で、個性あふれるメランコリックな素晴らしいギターを聴かせてくれていたが、本作ではそういったプレイヤーは見当たらない。これまでツアーメンバーだったギタリストのスノウィー・ホワイトや、デイヴ・キルミンスターの参加すらないには正直驚かされた。更には、これまでのロジャーのソロでは比較的、重要な役割を占めていた女性シンガー、コーラスも抑え気味だ。
こんな書き方をすると、四半世紀ぶりのアルバムが、何だか地味で退屈なアルバムの様に聞こえてしまうかもしれないが、決してそんな事はない。基本的な音楽性は、PINK FLOYDの「Final Cut」やソロの「Pros and Cons of Hitch Hiking(ヒッチハイクの賛否両論)」、「Amused to Death(死滅遊戯)」と変わらないし、意外な事に、「Animals」時代を彷彿とさせる”Pictures That“や”Smell the Roses“もあり、かなり聴き応えのあるアルバムなのは間違いない。
ロジャーはアルバム・リリースに合わせて「US + THEM」と冠したツアーを既にアメリカで開始している。現時点でのPINK FLOYDの曲が多めになっているが、新曲もそれなりにプレイされている。巨大ステージ、派手な仕掛けがウリでもあるロジャーのライヴが、海外よりも2周りくらい小さい会場になってしまう日本で実現する可能性はかなり低いと思われるが、果たして本作での来日は実現するだろか?
Is This the Life We Really Want? / ロジャー・ウォーターズ
1.When We Were Young、2.Deja Vu、3.The Last Refuge、4.Picture That、5.Broken Bones、6.Is This the Life We Really Want?、7.Bird of the Gale、8.The Most Beautiful Girl、9.Smell the Roses、10.Wait for Her、11.Oceans Apart、12.Part of Me Died