ロジャー・ウォーターズのThe Wall World Tourを収録したライヴ作品

ロジャー・ウォーターズ(Roger Waters)が2010年から2013年にかけて行ったThe Wall World Tourを収録した映画「Roger Waters The Wall」がBlu-ray、DVD、サントラCDとして登場した。
「The Wall」はPINK FLOYDが1979年にリリースした2枚組のコンセプト・アルバムで、シングルをリリースしないというポリシーを貫いてきたバンドが、11年ぶりにリリースしたシングルAnother Brick in the Wall part 2や、Run Like Hell、Confortably Numb等の名曲も収録されている。アルバム「The Wall」に伴うPINK FLOYDのライヴは、80年、81年にアルバム全体を通して演奏する再現ライヴとして行われ、ライヴの途中にステージと客席の間に実際に壁が築かれ、途中からは客席からバンドの演奏が直接見えなくなる。これは、バンドが巨大化するにつれてライヴで客席との間に距離を感じる様になったロジャーのアイデアによって生まれたものだ。ライヴのラストでその壁が一気に崩れ落ち、ライヴが終了する。あまりの巨大仕掛けなセットに本格的なツアーは行われず。ロサンゼルス、ニュー・ヨーク、ロンドン、ドルトムントのみで会場を固定してライヴが行われた。その後、ベルリンの壁崩壊後のドイツで、ロジャーのソロ・バンドとSCORPIONS等のゲストによる再現ライヴが行われた事もある。

今だから実現できる凄まじい演出の数々

今回のロジャー・ウォーターズによるThe Wallの再現ツアーは、アルバム・リリース当時できなかった大規模なセットを世界中に持ち歩くツアーが今では一般化した事で、足掛け3年にも及ぶロング・ツアーとして行われた。元々、PINK FLOYDは映像や照明を駆使した大仕掛けのステージの草分けともいえるバンドで、そのPINK FLOYDのコンセプト・メイカーだったロジャーが今の時代に行うステージの規模は桁違いに凄まじい。「The Wall」からの名曲に合わせて、最初から最後まで目を奪われる様な演出が飛び出してくるので、できるだけ高画質の大画面を迫力ある音量で観る事をお勧めしたい。

ロジャー・ウォーターズの回想シーン、ギルモアと共演するボーナス映像も収録

基本的にはThe Wallのライヴをステージでプレイされるシーンを収録した作品だが、ところどころに、ロジャーが戦死した家族を偲びながらエピソードを語るシーン等も挿入されている。通常のライヴ作品であれば、ライヴ演奏の途中で別のシーンが挿入されると水を差された気分になる事もあるが、本作では、このロジャーの個人的な回想も本作の重要な要素となっている。また、演奏のシーンではステージ上に築かれた壁に重要なメッセージが投影される演出が盛り込まれている為、英語が苦手な方は、アメリカ盤でも日本語字幕が選択可能なので、ぜひ字幕を入れて観て頂きたい。
ボーナス映像には、デヴィッド・ギルモアが登場するConfortably Numbや、ギルモア、ニック・メイソンが登場するOutside the Wall等も収録されている。