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ロジャー・ウォーターズ(元Pink Floyd)のソロ3作目、1992年リリースの「Amused to Death(邦題:死滅遊戯)」が、リマスターされ2015年バージョンとして甦った。今もなお世界中で絶大な人気を誇るPink Floydの頭脳と呼ばれ、「狂気」「ザ・ウォール」といったロック史上に残る名盤のコンセプトを作り上げたロジャーは、バンド脱退後のソロ作品でも、独特の感性と視点で優れたコンセプトアルバムを作り上げきた。

本作のコンセプトは、実際の戦争を娯楽の様に扱うテレビ社会への警鐘である。当時は世界中で湾岸戦争の様子がテレビで報じられていた。本物の戦争がドラマのワンシーンの様にテレビに平然と映し出される様子に、ロジャーは深い憂いを覚え、本作のコンセプトとなった。またロジャーは、リマスターを行うにあたり「現代の方が当時よりも、このアルバムの内容に近くなっている」とコメントしている。ロジャーのコメントを理解する為に歌詞にも是非注目していただきたい。

音楽的な観点での本作のポイントは、ジェフ・ベックの参加である。ロジャーのエキセントリックなヴォーカルと絡み合うジェフのギターがアルバムの緊張感を盛り上げている。ソロだけでなくジェフの独特のカッティングが聴ける曲も多い。ミック・ジャガーやジョン・ボン・ジョヴィなど様々なアーティストのソロ・アルバムにゲスト参加しているジェフであるが、本作でのプレイはゲストプレイヤーの域を超え、ロジャーと対等と言ってもよい。事実、当時制作されたミューックビデオでは、ロジャーとジェフがスタジオでセッションをするシーンがメインにとなっている。

ちなみに、この2015年バージョンには、オリジナルには無いジェフのギターソロが追加されている曲がある。ファン目線ではこれは非常に大きなポイントのはずだが、リリースに伴う広告や解説では一切言及されていない。CDを聴いて初めてジェフのソロが追加された事に気づく事になり、世界中のファンを驚かせている。これを宣伝文句にすればアルバムの売れ行きが大きく貢献するはずであるが、気難しいロジャーが、ゲスト参加のジェフの未発表テイク云々が話題になってしまうのを嫌ったのでは?と考えるのは邪推だろうか?