近年、活発化したミュージシャン同士のコラボ・プロジェクト

近年、異なるバンドで活動するミュージシャン同士が、本業のバンドとは別に、コラボ・プロジェクト形式の疑似バンドを結成して、作品をリリースする事が以前よりも多くなっている。遠く離れた国を拠点としていても、メールやスカイプで連絡をとり、音源のファイルを共有する事で、本業のバンドの活動に支障をきたすことなく、新しいプロジェクトを行えるというのは、ミュージシャンにとっては良い環境だろう。一昔前は、ソロ活動が原因でバンドとのスケジュール調整がうまく行かず、バンドが傾いてしまったり、メンバー・チェンジの原因になる事も、珍しくなかったが、今の様に要らぬ心配をする事なく、好きなミュージシャンの様々なソロ・プロジェクト作品が聴ける、というのはファンにとっても嬉しい事だ。

PHANTASMAのコンセプト・アルバム「The Deviant Hearts」

オランダのシンフォニック・メタルDELAINの女性シンガー、シャルロット・ウェッセルズと、オーストリアのゴシック・メタルSERENITYの男性シンガー、ゲオルグ・ノイハウザー、そしてスウェーデンのプログレ・バンドEVERONのオリバー・フィリップスの3人が中心となってPHANTASMAというプロジェクトを結成し、コンセプト・アルバム「The Deviant Hearts」を作り上げた。
こういったプロジェクトの仕掛け人としてはEscape Musicのカリル・タークが有名だが、PHANTASMAはNapalm Recordsが欧州でのアルバム・リリースを行っている。ツイン・ボーカルというスタイルはカリルが手がけるプロジェクトと似た要素があるが、このプロジェクトはゲオルグが主体となって、以前から交流があったオリバー、シャルロットに声をかけて出来上がったものだ。アルバムのコンセプトとなっているストーリーはシャルロットが書いた小説が元になっており、全ての曲が一つのストーリーとなっている、完全なコンセプト・アルバムに仕上がっている。

男女のシンガーによるデュエット形式のコンセプト・アルバム

本作は、通常のHR/HMバンドのコンセプト・アルバムとは大きく異なり、曲そのものは、ハードロック的ではあるが、プログレッシヴ・ロックのコンセプト・アルバムに近い雰囲気がある。プログレといってもテクニカルであったり、長い曲があったり、という形ではなく、美しいメロディの曲を、男女のシンガーがデュエットするスタイルで、コンパクトでありながらドラマチックに展開するスタイルの曲が多いので、コンセプト・アルバムにありがちな難解さは全くなく、ストーリーを意識しなくても、純粋に曲の良さを楽しむこともできる。ヴォーカルだけではなく、ギター・プレイも非常に美しいフレーズが満載で、そういう意味では日本人好みのアルバムと言える。