サイケデリック&プログレッシヴなアルバム「Second Psychedelic Coming: The Aquarius Tapes」

北欧の魔女の異名を持つ女性ヴォーカリスト、ジェスを擁するフィンランドのオカルト・ハードロック・バンドJESS AND THE ANCIENT ONESが、2013年以来となる、ニュー・アルバム「Second Psychedelic Coming: The Aquarius Tapes」をリリースした。サイケデリック的な雰囲気、音楽性を持つこのバンドは、現代的なHR/HMとは一線を画した存在で、アルバムのサウンドも意図的に70年代を意識した仕上がりになっている。何も知らずに聴けば、21世紀のバンドとは思わないだろう。単なるクラシック・ロック指向ではなく、CATHEDRALやCANDLEMASS、「Heritage」以降のOPETHといったバンドからの影響も感じられる部分もあり、レトロ感と現代の音楽の融合が、JESS AND THE ANCIENT ONESの特徴と言えるだろう。

ヴィンテージ・ロック・ファンの琴線にも触れるサウンド

バンドのブレインは、ギタリストのトーマス・コープスが担っており、2人のギタリストが在籍するハードロック・バンドであるが、ツイン・リードや鋭いリフと言った要素は無く、サウンド的には、ワウの効いたギターと、オルガン調のキーボードが大きなポイントとなっている曲が多い。現代のバンドながら、ヴィンテージ・ロック・ファンの琴線に触れるバンドだ。バンドの世界観は、ドゥーム・メタルに通じるものがあり、実際、スローなナンバーもあるが、ドゥーム・メタルの様な地を這うような音楽ではなく、むしろ、ドライヴする様なベース・ラインの、ある意味「ノリが良い」曲が多いので、聴きやすいと言えば聴きやすい。怪しげな雰囲気で歌い上げるジェスのヴォーカルも、圧倒的な存在感を放っている。

22分を超える圧巻の大作、Goodbye to Virgin Grounds Forever

それぞれの曲が、個性的で高いクオリティを持っているが、何と言っても圧巻は、22分にも及ぶアルバム本編ラストのGoodbye to Virgin Grounds Foreverだ。怪しさと美しさが同居するドラマチックなこの曲だけの為に、このアルバムを買っても損はない、と言える程の素晴らしい曲だ。

なお本作の日本盤には、DEAD MOONのカヴァーDead in the Saddleが収録されている。