当初から、ソロ活動継続の条件付きでDEEP PURPLEへの加入を承諾
アメリカ出身のギタリスト、スティーヴ・モーズ(Steve Morse)がリッチー・ブラックモアの後任としてDEEP PURPLEに加入したのは94年の事だ。当時、スティーヴは、ソロ活動も並行して進める、という条件付きでバンドへの加入を承諾しており、DEEP PURPLE加入後にその活動ペースは衰えるどころか、ますます加速していった。DEEP PURPLE加入以前のスティーヴは、知名度は高かったが商業的な成功はできておらず、後のインタビューでは自嘲気味に「以前は、ギターやアンプの運搬から、チューニングまで全て自分でやっていたが、今では、ギターのスタッフだけで3人もいる。」と語っていた。音楽に専念できる環境(とおそらくは資金)を得たスティーヴは、DEEP PURPLEのスケジュールとソロ・スケジュールをうまく切り分けて、数多くのソロ活動をこなしている。
WINGERのロッド・モーゲンステインと組むDIXIE DREGS等、数多くのバンド活動を展開
まず、自らのキャリアの出発点であるプログレ・フュージョン・バンドDIXIE DREGSの再結成だ。70年代に結成され、商業的には成功しなかったが、音楽そのものの質は高い通好みのバンドだった。WINGERの活動が暗礁に乗り上げていたロッド・モーゲンステインやソロ活動を共にしていた仲間達と共に、スティーヴはDIXIE DREGSの再結成アルバム制作とツアーを行った。他にもトリオ編成のインスト・バンドSTEVE MORSE BAND、ソロ(STEVE MORSE)名義、元OZZY OSBOURNE BANDのメンバーと結成したLIVING LOUD(2003年~2005年)、アコースティック・プロジェクトANGELFIRE(2010年)、そして、マイク・ポートノイ、ニール・モーズ等と結成するプログレ・バンドFLYING COLORS(2012年~)等を行っている。
高度な技術と音楽センスで、ジャンルを超えて活動しているスティーヴだが、音楽性に対する柔軟性とは裏腹に、ギター・サウンド、プレイ・スタイルは、基本的にどのバンドでも、自分のサウンドを貫いており、リッチー脱退後のDEEP PURPLEのサウンドの変化にも大きなインパクトを与えている。
DEEP PURPLEでもイエス・マンにはならないスティーヴ
ステージ上では笑顔でプレイする事が多く、ソロ・バトルの後にドン・エイリーと握手を交わす等、リッチー時代は緊張感の塊だったDEEP PURPLEのステージに、明るさと温かみをもたらしたスティーヴは、スタジオやステージでのリッチーの振る舞いに翻弄され続けたバンド・メンバーに活力と笑顔を与えている様に見えるし、実際にそういう部分もあるのだろう。
だが、DEEP PURPLEでもスティーヴは単なるイエス・マンの雇われギタリストではない。かつてDEEP PURPLE、RAINBOWでリッチー・ブラックモアという天才肌で個性的な性格のギタリストと、ベーシスト、ソングライター、プロデューサーとして長く仕事をしてきたロジャー・グローヴァーは、メディアから、過去の「ひねくれ者」と、チーム・プレイができるスティーヴの違い聞かれて、この様に語っている。
ロジャー:「確かにリッチーに比べたらスティーヴとの仕事はやりやすいし、雰囲気は悪くない。だがスティーヴも時に理解に苦しむ行動をする事がある。優秀なギタリストというのは、大なり小なりそういうものなんだ。(スティーヴも)例外ではない。(笑)」