80年代にKajagoogoo(カジャグーグー)のベーシスト兼シンガーとして脚光を浴び、現在はスティーヴ・ハケットやスティーヴン・ウィルソン(PORCUPINE TREE)といったプログレ系ミュージシャンと活動するニック・ベッグス(Ba&Vo)が、スティーヴ・ハケット・バンドの同僚であるロジャー・キング(Key)、UK等の活動で有名な超絶ドラマー、マルコ・ミンネマン(このバンドではドラムス以外にギターもプレイ)と組むプログレッシヴ・ロック・バンド、THE MUTE GODS(ザ・ミュート・ゴッズ)が、セカンド・アルバム「Tardigrades Will Inherit the Earth(緩歩動物は地球を受け継ぐだろう)」をリリースした。
プログレ界のレジェンド級ミュージシャン達のレコーディングやツアーに数多く参加し名をはせる猛者の集まりから、技巧的でマニアックなサウンドを想像するだろうが、これが意外にもポップ、キャッチーとまでは行かないが、耳に馴染みやすい曲が多い。コード進行やアレンジは、一筋縄ではいかない不思議な雰囲気を醸し出しているが、ニックが昔と変わらぬ歌声でリード・ヴォーカルをとっている事もあり、なんとなく「Islands(1984年)」以降のKajagoogooを連想してしまうのだ。花形シンガーだったリマールが脱退した後、珍しいチャップマンスティックをプレイしながら歌うニックの姿は、かなりのインパクトがあった。ファースト・アルバム「White Feathers(邦題:君はTooShy,1983年)で、アイドル・バンド的なデビューをした彼らだが、セカンド・アルバム「Islands」では、ヒットを意識したキャッチーさも残しながら、実験的なサウンドも取り入れ始めていた。
ヘヴィなドラミングやリフ、ギターソロも入るこのTHE MUTE GODSが、Kajagoogooの再来などと言うつもりは全く無いし、ニックもそんな事を意識しているはずもないが、それほどに、このTHE MUTE GODSがモダンなプログレッシヴ・ロックと、懐かしいテクノ系のブリティッシュ・ポップが絶妙にブレンドされている。特に、ビデオになっているタイトル・トラックはその傾向が強いので、ぜひ、YouTube等で試聴していただき、気に入ったらアルバム全編を聴いて頂きたい。
Tardigrades Will Inherit the Earth(緩歩動物は地球を受け継ぐだろう)
1. Saltatio Mortis(死の舞踏)、2. Animal Army(動物の軍隊)、3. We Can’t Carry On(もうやっていけない)、4. The Dumbing of the Stupid(愚者の愚痴)、 5. Early Warning(早期警告)、6. Tardigrades Will Inherit the Earth(緩歩動物は地球を受け継ぐだろう)、7. Window onto the Sun(対応への窓)、8. Lament(嘆き)、9. The Singing Fish of Batticaloa(バッティカロアの歌う魚)、10. Hallelujah、11. The Andromeda Strain(アンドロメダの血統)、12. Stranger Than Fiction(フィクションよりも見知らぬ人)