待望の復活の舞台
NICO Touches the Wallsが3度目の武道館でのLIVEを開催した。これは11月にギターの古村 大介が右手骨折、そして年内のLIVE活動を休止せざるを得ないという大打撃を受けてからの4人での復活のステージとなり、久し振りに彼らのLIVEを観れると期待で胸をはちきれそうにしたファンが喜びを露わにして、1度目には埋めきれなかった程の大きな会場を満杯にしていた。
視覚的にも引き込まれる演出
開演時間を少し過ぎた頃、照明が落ちた会場にプロジェクションマッピングを使ったアニメーションが流れ出した。「口笛ふいて、こんにちは」の印象的なフレーズを奏でながら通りを歩く主人公が、渦の街に吸い込まれていくという今回のライブのコンセプトに基づいたストーリーが展開されていく映像に思わず目を奪われていると、ゆっくりとスクリーンになっていた紗幕が上昇して楽器を抱えたメンバーが「渦と渦」をオマージュしたインストを奏で出すという、ドラマチックな展開での幕開け。オーディエンスの期待感が自ずと高まっていく。
そのまま「天地ガエシ」の印象的なギターリフが流れ出すと会場は大歓声に包まれた。光村龍哉(Vo,Gt)の伸びやかな声と共に歌われる「まっすぐなうた」「ランナー」と新旧織り交ぜた楽曲群に誘われる様に武道館が少しずつ熱を帯びて、「ローハイド」の快活なギターソロが鳴り始める頃には4人で8000人のオーディエンスの心をがっつりと掴んでしまっていた。
会場のボルテージを爆発させる熱狂メガミックス
『ただいま』と光村が叫ぶとあちこちから『おかえり』と暖かい声が迎え入れる。もちろん3度目の武道館での『ただいま』という意味もあるのだが、何と言っても今回の主役は骨折からの復活になった古村だ。『心配かけました』と話した後、照れ笑いながら右手を振って見せた姿に安心感を覚えた人も多かっただろう。メンバーが笑顔で見守る姿も印象的だった。
『1回目の武道館はチャレンジ、2回目の武道館はリベンジと繋げてきたので、何か語呂の良い言葉が無いかと思いまして…今回は“アレンジ”。武道館を僕ら色にアレンジしてやります!』と光村が宣言し、踊れメガミックスと銘打たれた、数々の名曲が惜しみなく詰め込まれたメドレーへ。
「バニーガールとダニーボーイ」のワンフレーズが奏でられると、待ってましたと言わんばかりに会場中が拳を突き上げた。「泥んこドビー」ギターの音色が可愛らしい「N極とN極」、青々しい若さが突き刺さる「Broken Youth」小さなミラーボールの光が会場を優しく包み込んだ「夜の果て」など、彼らの楽曲の中でも普段は披露されにくい曲も含めて次々と披露され、会場のボルテージは一気に爆発。『長いよ?』という言葉通り、1時間弱にも及び、ボリュームたっぷりに目まぐるしく会場の空気を変えながら進んでいったメドレーは、NICOの持っている楽曲の幅の広さや魅力を改めて浮き彫りにするようなものだった。
真っ直ぐに響く彼らのグルーヴ
『どうでしたか?踊れました?』と笑顔で問い掛けた光村が歓声を満足そうに受け止めると、『アルバムの方もね…』とまさかのニューアルバムのリリースを発表。会場を嬉しい悲鳴とどよめきが埋め尽くした。
アルバムの写真撮影時のエピソードで会場を和ませつつ、『新曲をやってみようと思います。「永久ライセンス」という曲です。』と話すと、披露されたのはピュアなラブソング。夜空がよく似合いそうな疾走感のあるサウンドに乗せて、オーディエンスの手を引くように曲の世界へと一気に引き込んだ。続いて披露された新曲はどちらかと言えば若い煌めきを内包した「永久ライセンス」とは対照的に何とも色っぽい一曲で、身動きも出来ずに思わずじっとステージに聴き入ってしまうようなアダルトな雰囲気を孕んでいた。
スクリーンに再びアニメーションが映し出されると、前回の武道館ではアンコールで披露されていた「TOKYO Dreamer」。東京で生き抜いていく、そんな決意を真っ直ぐに歌ったこの曲は彼らが戦いの舞台として何度も選んできた武道館という舞台に本当に良く映える。光村のスキャットが重厚なサウンドの中で冴え渡った「ニワカ雨ニモ負ケズ」、「バイシクル」「ホログラム」とシングル曲を惜しみなく披露。
本編最後は今回のテーマにもなっている「渦と渦」だ。イントロから少しずつせり上がってくるグルーブ感に思わず身震いを覚えるほど、対馬の力強いドラムに乗った、坂倉の太くてしなやかなベースライン、そこに古村・光村のダブルギターが加わり織りなされるドラマチックなメロディーには心揺さぶるものがあった。
ここまでどんな困難にぶつかっても走り抜けてきた彼らが信念を曲げずに走り続けて、真っ直ぐに夢を追う姿はこれからも沢山の人に力を与えていくのだろう。
アルバムに籠めたピュアな偽りなき想い
鳴り止まない拍手に応えて、アンコールで登場した4人が披露したのは、メンバーが着ていたスウェットデザインにも関連している「僕は30になるけれど」。ゆったりした雰囲気の中で光村の声に華を添えるようなコーラスが響き渡っていく。
光村は『今回は僕らなりに考えて1本の映画を見ているようなLIVEにしたかった』と話すと、協力してくれたアニメーターの加藤 隆さんに感謝の意を告げ、『また会える日までの約束代わりに』とオーディエンスに手拍子を煽ってLIVE鉄板曲と言っても過言ではない「手をたたけ」を演奏した。客電を目一杯まで明るくしてオーディエンスを見つめる4人が本当に良い笑顔で、応えるように巻き起こった合唱は今日を楽しみ切ったオーディエンスの幸福感で溢れている。
ここで光村が1人でアコースティックギターを抱えると『今度のニューアルバムはきっと今までのNICO史上最もピュアな作品になると思います。』と次回作に対する想いを話し、これからも嘘のないピュアな気持ちで作品を届けていきたいと会場に集まった一人一人に届けるように丁寧に語った。最後に披露されたのは、まだバンドアレンジも決まっていない発展途上な楽曲。光村が紡ぐ言葉の一つ一つを聞き漏らすまいとする様に、オーディエンスはステージを見つめて最後までじっと聴き入っていた。
今後の予定
3度目の武道館も見事に成功して、着実に実力を伸ばしていっている彼ら。最後に内緒ばなしを打ち明けるように話していた『4度目の武道館』が実現する日もそう遠くはないだろう。
各地で熱狂の渦を生み出している彼らの4度目の武道館まで待ちきれないという方は、3/4のEX THEATERを皮切りに行われる次のアルバムのリリースツアーに足を運んでみてはいかがだろうか。他にも延期されていた大阪城公演も決まっているので、予定を空けて今の彼らを体感しに行ってみて欲しい。