キース・エマーソン死去
EMERSON,LAKE & PALMER(ELP)やNICEで活躍した、伝説的キーボード・プレイヤー、キース・エマーソン(Keith Emerson)が、現地時間3月10日にアメリカのカリフォルニア州の自宅で亡くなった。享年71才。現地警察により、自殺であった事が確認されている。来月には2008年以来の来日公演が予定されていた矢先であり、俄かには信じがたいニュースであった。「手に病を患い、思うようなプレイができなくなっていた」というキースのガールフレンドの言葉を海外メディアが紹介している。予定されていた日本公演は、サポートのキーボード・プレイヤーが付く事になっていた様だ。自らが満足できるプレイが出来なくなった事に対して、精神的に不安定な状態だった事も報じられている。
ロックにおけるキーボードの概念を変えたキース
「Pictures at Exhibition (展覧会の絵)」、「Tarkus(タルカス)」等、70年代にELPとして制作された名盤の数々や、ライヴにおける圧倒的なパフォーマンスは、ロック・バンドにおけるキーボード・プレイヤーの概念を完全に変えるものだったと言える。ギターレスのトリオでありながら、そのサウンドはプログレッシヴ・ロックであると同時にハード・ロックでもあった。高度な演奏技術やクラシック、ジャズ的なアプローチを取り入れながらも、楽器や音楽の知識がなくてもロック、ハード・ロックとしても楽しめるプログレッシヴ・ロック、それがELPだった。或る意味でQUEENと似ている部分がある。メンバーが全員、容姿端麗でアイドル的な売れ方もしていたという点も、QUEENとの共通点だ。日本でもその人気は圧倒的で、スタジアムでプレイをしたプログレッシヴ・ロック・バンドは後にも先にもELPだけだ。
40周年記念がラスト・パフォーマンスとなったELP
多くのプログレッシヴ・ロック・バンド同様にELPも70年代の終盤には全盛期の勢いを失い、80年に一度解散をしている。その後コージー・パウエルを迎えたEMERSON,LAKE & POWELLやTHREEといった疑似再結成を経て、91年に復活するも、98年のツアーを最後にグレッグ・レイクが脱退を表明し、事実上の解散状態となっていた。しかし、2010年に40周年を記念した一夜限りの再結成を果たし、そのパフォーマンスがライヴ作品「High Voltage Festival 2010」として残されている。 結果的にこれがELPのラスト・パフォーマンスとなった。
キース・エマーソンを失った以上、二度とELPが甦る事はない。
R.I.P.キース・エマーソン(1944-2016)。