LOUD PARK 2016で初来日を果たしたARMORED SAINT(アーマード・セイント)ジョーイ・ヴェラ(Ba,プロデューサー,ソングライター)の単独インタビューの続編を、LOUD PARKでのライヴ写真と共にお届けする。
インタビューのパート1はこちら


LiveLand(L): オリジナル・ギタリストのデイヴ・プリチャードは、残念ながら90年に白血病で亡くなってしまいました。多くの日本のファンは彼に会うチャンスがありませんでした。彼がどんな人だったか教えていただけますか?

ジョーイ・ヴェラ(J): デイヴはとても素晴らしいギタリストだった。初期のエディ・ヴァン・ヘイレンやマイケル・シェンカー、ジョージ・リンチ、タイ・テイバー(KING’S X)、ランディ・ローズ等に影響を受けていて、彼のプレイはブルーズとクラシックをミックスさせた様なユニークなスタイルだった。また、創造性がとても豊かでね。時に彼は、自分のギタリストとしての能力以上のフレーズを思いついたりしていた。だから、彼は向上心が強くて、いつもギターの練習をしていた。彼が生きていたら、どんな素晴らしいギタリストになっていただろうか、と思うよ。一方で、彼はとても楽しい男だったよ。いつも前向きで社交的で、ユーモアがあって、誰とても仲良くなって楽しめる才能があったんだ。彼のパーティはいつでもエンドレスだったよ!(笑)

Armored Saint

L: 私もデイヴに会ってみたかったです。さて、90年代に入るとARMORED SAINTは苦難の時期に入ります。デイヴの死去は最大の悲劇でしたが、ジョン・ブッシュ(Vo)がANTHRAX(アンスラックス)加入の為にバンドを離脱した事も痛手だったと思います。当時の事を聞かせてください。ジョンがANTHRAXに加入した時、あなたはどんな気持ちでしたか?

J: 確かにあの頃はバンドの状態は最悪だったよ。デイヴが亡くなった後にリリースした「Symbol of Salvation(91年)」は、とても素晴らしいアルバムだった。俺たちはアルバムの出来に自信満々だったんだ。曲、プレイ、プロダクション、全てにおいて満足していた。事前のプレスの評価だって高かったから、このアルバムで俺たちは蘇るんだ!そんな気持ちで一杯だったのさ。ところが、いざアルバムをリリースしてみると、セールスは最悪で、誰も相手にしてくれなかった。とても失望したよ。アルバムをリリースして短いツアーを終えた後、次のアルバムの為の曲を書き始めたが、「Symbol of Salvation」がダメだったから、次にどうすればいいのか、全く分からなかった。昔の音楽性に戻るのか?それとも、もっとモダンな路線がいいのか?皆が混乱していたよ。当時のバンドは完全に方向性を失ってしまった。新しい音楽性を模索して、毎日、酷い言い争いが絶えなかった。そんな時、ジョンにANTHRAXから声がかかった。その時の俺の気持ちを正直に話そう。これはARMORED SAINTを止める良い理由になる、と思っていたよ!ジョンが俺のところに相談に来た時、彼はどうすべきか迷っていた。だから俺はジョンに言ったんだ。「ANTHARXからの話を受けるべきだ」とね。ジョンならANTHARXでやっていけると確信していた。逆にARMORED SAINTにとどまっても、この先どうなるか分からない状態だったから、「どんなサポートでもするからANTHRAXに入れ!」と言ったんだ。

L:そこまで強く後押ししたんですか?

J:ああ、そうだよ。俺は、あの時のバンドの状況に疲れ果てていたんだよ。音楽的な失望感だけではなく、果てしない言い争いや、内輪の揉め事にね。だから俺は全てを終わりにしたかった。ジョンは去り際に「また一緒に(バンドを)やろうな!」と言ったが、俺は「冗談だろ?お前は別のバンドに加入するんだ。どうやったら、また一緒にやれるんだ?」と言い返したよ。だが彼は正しかった!99年に再結成して「Revelation(2000年)」をリリースする事になるんだからね。(笑) 話が長くなったが君の質問に答えると、ジョンがANTHRAXに加入した事に対して、俺は悪い気持ち等、全く感じなかったよ。これが本心だ。ARMORED SAINTを続けられない事に対する悲しみや失望はあったが、それはジョンのせいではない。

Armored Saint

L: しかし、ジョンはANTHRAXというビッグ・ネームのバンドのフロント・マンになりましたが、同時にあなたはバンド(ARMORED SAINT)を失ってしまいましたね?その時、次にどうしようと思っていたんですか?

J: 俺の中では、ジョンが辞めた時点でARMORED SAINTは終わったんだ。代わりのシンガーを探して続けようとは全く思わなかった。だから、メタルに限らず様々なジャンルのミュージシャンと交流を持って、一緒にプレイをしながら、俺の次の方向性を探していた。そして、96年にFATES WARNINGに加入する事になった。FATES WARNINGは俺のミュージシャンとしての第二の人生として、重要な存在になった。先に話した通り、今でもFATES WARNINGでニュー・アルバムを作り、ツアーに出ようとしているんだからね。FATES WARNINGは、俺のミュージシャンとしての能力を、別の次元に引き上げてくれた。

L:その後、ARMORED SAINTも1999年、2010年と2度の再結成を果たして現在に至ります。80年代と現在のARMORED SAINTでは、何が昔と異なっていますか?逆に昔から変わらないものは何ですか?

J: まず、昔から変わらないもの、何といってもラインナップだよ。亡くなったデイヴ、そして、それ以降91年から活動しているジェフ・ダンカン(Gt)を除いて、俺たちはデビュー以来、メンバー・チェンジをしていない。これは誇るべき事だ。多くのバンドは、メンバー・チェンジを繰り返し、時にオリジナル・メンバーが一人しかいない事もある。俺たちは、デイヴ以外全員がファースト・アルバムから一緒なんだ。これは素晴らしい事だ。
昔と違う事は、メンバーのバンドへの関わり方が、より効率的になったという事だろう。80年代の初めにバンドを組んだ時、俺たちは皆、ガキだった。毎日一緒にスタジオに入るだけじゃなく、リハの後に遊ぶのも一緒、飲むのも一緒。リハだって何時間もジャムったりして、良いリフやメロディが出てくるのをずっと待っていた感じだ。若い頃は、そういった関係は重要だ。お互いを理解し合えるし、その時の友情が今でも続いている。だが、今の俺たちは毎日スタジオに入ったりはしない。バンドとしてやるべき事が出来た時に、あらかじめ予定を立てて行動をする。メンバーそれぞれの別の生活があるしね。俺個人としては、今はバンドをプロデュースする立場でもあるから、バンドへの関わり方が、昔とはかなり違っている。昔の俺は只のベース・プレイヤーに過ぎなかった。もちろん、昔から曲を書いて音楽的な貢献はしていたよ。だが、バンドの進め方について、重要な意思決定をする事はなかった。だが、今は俺とジョンが音楽的な事だけではなく、ビジネスとしてもバンドの運営に責任を持っている。昔は、全てが行き当たりばったりでね。何か決めようとミーティングしても、ムダ話だけして終わりだったよ!今はキチンとしているがね。(笑)

Armored Saint

L: 今後のバンドの予定について伺います。新しいライヴ・アルバムを製作するそうですが、この作品について話していただけますか?

J: 新しいライヴ・アルバムは、昨年(2015年)にドイツの2か所でライヴ・レコーディングされていて、全8曲が収録される。リリースは来年(2017年)2月の予定だ。既にマスタリングまで完了しているよ。素晴らしい出来に満足している。俺たちの「Unleashed in the East」(JUDAS PRIESTの79年のライヴ盤)となるだろうね!JUDAS PRIESTのこのライヴ・アルバムは俺のお気に入りのライヴ・アルバムで、こんなライヴ盤を作りたいと長年思ってきたんだ。

L:それは楽しみですね!現在、このライヴ・アルバムの先行予約をPledge Music(クラウド・ファンディング)を通して行っていますね?

J: その通り。先に話した通り、ライヴ・アルバムは既に完成している。このPledge Musicのキャンペーンはアルバムを作るための費用を集める為ではなく、ファンの皆に特別なプレゼントをしたいと思ったからなんだ。アルバムが一般発売される前にダウンロードで聴くことができるし、Tシャツやサインやその他レアな特典も沢山あって、ファンへの特別なプレゼントになると思ったのさ。あと、このキャンペーンはこの後アメリカで行うQUEENSRYCHEとのツアーの費用にも充てるつもりだ。今回のツアーは、俺たちの通常のツアーよりも長くて大規模なものになる。その分コストも掛かって大変なんだ。ツアーを始める前にお金は入ってこないが、準備の支払いは待ってくれないからね!(笑)アメリカを一回りする長いツアーだよ!これほどのツアーは80年代以来だね。

L:ツアーは今でも好きですか?

J:ツアーは好きだが、今の俺には2週間くらいが丁度いい長さだ。家族の事や、他のプロジェクトもあるからね。3週間も家を空けると少し長い気がする。今回のツアーは4週間だからとても長いよ!だけど、QUEENSRYCHEは俺たちに良い条件でプレイさせてくれるから、一緒にツアーする事にしたのさ。上手くいく事を願っているよ!

L:ツアーの成功を祈っています!そして、新しいライヴ・アルバムを楽しみながら、次の来日を待っています!最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

J: 皆のサポートに心から感謝しているよ。デビュー当時からのファンは勿論、LOUD PARKに参加する事になって俺たちのアルバムを聴いてくれたファンにもね。君たちがいなければ、俺たちは、アルバム作りもツアーも、何もできない。特に、日本のファンは長く俺たちの事を待ってくれていた。そして、君たちのおかげでこうして日本でプレイする夢が叶ったよ。本当にありがとう!「Win Hands Down」やこれまの俺たちのアルバムを楽しんでくれ!そして新しいライヴ・アルバムも楽しみにしていてくれ!次に日本でプレイする日が待ち遠しいよ!

インタビュー、写真:Masashi Furukawa
取材協力:ルビコン・ミュージック

Armored Saint


ARMORED SAINTの新作ライヴ盤、Pledge Musicサイトはこちら(英語) 日本リリースは未定。

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