LOUD PARK 2016で、ついに初来日を果たしたARMORED SAINT(アーマード・セイント)。シンガーのジョン・ブッシュは長くANTHRAXに在籍し、LOUD PARKやその他来日経験も豊富で日本のファンにもお馴染みだ。しかし、もう一人のバンドの頭脳であり、メイン・ソングライターであり、プロデューサーでもある、ジョーイ・ヴェラ(Ba)については、ARMORED SAINT以外にも、FATES WARNINGや、元DREAM THEATERのケヴィン・ムーア、マイク・ポートノイとのプロジェクト等、ヘヴィ・メタルの枠を超えて活躍しているが、あまり日本では知られているとは言えない。そのジョーイ・ヴェラが、今回、LOUD PARKの会場で単独インタビューに応じてくれた。


LiveLand(L): ARMORED SAINTとして初めての来日が実現したお気持ちは?

ジョーイ・ヴェラ(J): とてもエキサイティングだよ!俺たちは長い間、日本でプレイする事を待ち望んでいたんだ。84年に1stアルバム「March of the Saint」をリリースした時、日本の反響はとても素晴らしかった。BURRN!を始め沢山のメディアで取り上げられて、良いレビューを書いて貰ったし、宣伝も沢山やった。俺たちの想像を超えた出来事だったんだ。だから、絶対に日本に行きたい!と思っていたよ。まさか、こんなに長くかかってしまうとはね。(笑) でも、こうやって来日できて、とてもエキサイトしているよ。俺自身は2004年のANTHRAXのツアーが最初の来日だったが、クレイジーでファンタスティックなファンが沢山いて、想像以上だったね!今回、ARMORED SAINTとして来ることができて本当に嬉しいね。

Armored Saint Joey

L: 最新作「Win Hands Down」に対する、ファンからの反響は?

J: ファンからは良い反応が返ってきているよ。皆が新作を気に入ってくれて良かったよ。アルバムをリリースするまでは、果たして、どんな風に受け止められるか分からなかったからね。実際、ファンがアルバムを聴いて、楽しんでくれている様子が伝わってくると、とても嬉しい気持ちになる。

L: アルバムがリリースされて1年以上が経過していますが、今現在、あなた自身がこのアルバムにどんな思いがありますか?

J: アルバムをリリースした直後と同じ様に、今でもこのアルバムを、とても誇りに思っている。このアルバムは「ARMORED SAINTが何者か?」という事を明確に表しているんだ。俺たちのルーツであったり、俺たちがどんな方向性へ進もうとしているのか?という事をね。このバンドは今でも進化し続けているんだ。それをこのアルバムで表現できている事にとても満足しているよ。

L:今年に入って、アメリカの西海岸をMETAL CHURCHと一緒にツアーしましたが、いかがでしたか?

J: あのMETAL CHURCHとのツアーは素晴らしかった。彼らとは長い付き合いで、ナイスガイの集まりだ。俺たちは共に80年代から活動してきて、音楽性にも共通点があるから、共通のファンも多い。だから、このツアーの話を聞いた時、とても良い組み合わせだと感じたよ。実際、殆どの会場はソールド・アウトだったからね!

L: 来日の前にプレイしたOZZFEST meets KNOTFESTはどんな感じでしたか?

J:とても良かったよ。俺たちはフェス本編の前夜祭的なイベントでプレイしたんだ。キャンピングのチケットを持ったファンが7,000人くらいはいたな。金曜日の夜さ。皆、仕事を片付けて「さぁ、フェスを楽しむぞ!」って勢いで来ているから、最高だったよ!

L: フェスではファン以外の前でプレイする事になりますが、例えばARMORED SAINTの事を全く知らない若いメタル・ファンの前でプレイするというのはどんな気分ですか?

J: このLOUD PARKも同じ事が言えるが、ARMORED SAINTは名前くらいしか知らないとか、全く知らない、そういった人たちの前でライヴをするというのは、とても重要な事なんだ。俺たちはライヴ・バンドだからね。熱いぶっ飛ぶ様なライヴを見せつけるんだ!そうすれば若いメタル・ファン達も「このバンドは年寄りだけどすげえ!(笑)」って新しいファンを獲得するチャンスになるのさ!

Armored Saint

L: 話題は変わりますが、あなたはFATES WARNINGでも今年ニュー・アルバムTheories of Flightをリリースしていますね。今は2つのバンドを並行して続けているのですか?

J: その通りだ。俺はFATES WARNINGとして、来年早々にヨーロッパをツアーして、その後は3月~4月頃にアメリカも回る予定だ。この2つのバンドは全く違う音楽性だし、MOTOR SISTERというもっとストレートなハードロックもやっている。他にも様々なバンドやプロジェクトに関わっている。

L: メタル以外にも、いろいろなスタイルの音楽をプレイしていますが、最も好きな音楽スタイルはなんですか?

J: 好きなスタイルか、、、ファンクだね!

L: 冗談でしょう?

J: いや本当なんだ。からかっている訳じゃないよ。(笑) 確かに、若いころの俺は、70年代ハードロックと共に育ってきた。BLACK SABBATHギーザー・バトラージョン・エントウィッスル(THE WHO)ジョン・ポール・ジョーンズ(LED ZEPPELIN)を沢山聞いてきた。俺のルーツが70年代ハードロックにあるのは間違いない。だが、もう少し後になると、R&Bやファンクにも興味を持つ様になった。EARTH WIND & FIRESLY & THE FAMILY STONEの様な音楽も俺のベース・プレイの一部になったんだ。ファンキーなリズムで、皆が踊れるような音楽が好きなんだ。それは今でも俺の中に染み付いているよ。ハードロックとファンクのコンビネーションだね!(笑)

L: 確かに、新作のタイトルトラック”Win Hands Down”の中間部にも、メタル的ではない、面白いベース・フレーズがありますね。あのフレーズは好きです。

J: そうだろ?気に入ってくれたかい?ありがとう!あんな風に、メタル以外のリズムもARMORED SAINTに反映されているのさ。

Armored Saint

L: 好きなベースプレイヤーは?

J:  一人を選ぶのは難しいな。さっき挙げた人たち以外には、ヴァーダイン・ホワイト(EW&F)、SLY & THE FAMILY STONEのラリー・グラハムジャコ・パストリアスマーカス・ミラー。ざっと挙げてみたよ。

L: ジャコは私も大好きです。ライヴを見たことはありますか?

J: もちろんさ!「Word of Mouth」のツアーをロサンゼルスで見たよ。ぶっ飛んだね。俺の音楽観が変わってしまったよ!彼以前にも凄いベーシストは沢山見てきたが、ジャコを見た瞬間に「なんだこれは?どうなってるんだ?」って感じでね。本当に衝撃的だった。それまでは、俺は比較的シンプルなベース・プレイヤーだったけど、ジャコに出会ってからは、俺のスタイルも全く変わったね。

L: ARMORED SAINTの話に戻ります。ARMORED SAINTの地元はロサンゼルスですが、我々が持ついわゆるLAメタルバンドのイメージとは、当初から違っていました。メイクアップやヘアメタル的な要素がありませんでしたが、これはなぜでしょう?

J: 俺たちはロサンゼルスを拠点としていたが、確かに、いわゆるヘアメタル的なイメージは無かった。実際のところ、ああいったスタイルをLAメタルに持ち込んだのはMOTLEY CRUEだと言えるが、俺たちは彼らが出てくる前から既に活動を始めてスタイルを確立していた。俺たちがバンドを始めた頃のロサンゼルスは、もっとNWOBHM的な音楽が主流だった。SAXONとかIRON MAIDENだね。だから、俺たちはそういったバンドに影響をされているんだ。更にもう少し後、86年、87年頃、GUNS N’ ROSESLA GUNSPOISONが台頭してきた頃には、俺たちはもうロサンゼルスのバンドではなかった。イギリスのクリサリス・レコードと契約を交わして、アメリカだけではなく、ヨーロッパや世界を視野にいれていたんだ。だからLAメタル、ヘアメタル的なイメージは必要としなかったんだ。
昔は、今と違って情報が世界中を駆け巡る事はなく、ロサンゼルスもそうだが、地域毎に音楽的なスタイルも違いがあった。俺たちが活動し始めた頃のロサンゼルスは、それがNWOBHM的だったって事なんだ。

Armored Saint Joey

to be continued…


インタビューの話題は、この後、早世したオリジナル・ギタリスト、デイヴ・プリチャードや、ジョン・ブッシュのANTHRAXに関する話へと移っていく。さらに、ARMORED SAINTの次作に関しても語ってくれている。近日公開予定のインタビュー続編と、LOUD PARKライヴレポにご期待ください!

インタビュー、写真:Masashi Furukawa
取材協力:ルビコン・ミュージック