5年ぶりのアルバム「Ghost Ship」を引っ提げてヨーロッパを転戦したパワーメタル・バンド、THEOCRACY(シアクラシー)のシンガー、マット・スミス(Matt Smith)のインタビューをお届けする。


-ハロー、マット!忙しい中、インタビューを受けて頂きありがとうございます。ヨーロッパ・ツアーはいかがでしたか?

Matt(M):こちらこそ、ありがとう!ツアーは、素晴らしかったよ!間違いなく、過去最高だった。期間は短かったけど、チケットの売れ行きは良かったし、毎回、素晴らしいライヴができた。サポート・バンドで一緒に廻ったWITHIN SILENCE(スロバキア出身のパワーメタル・バンド。今年1月「Gallery of Life」で日本デビュー。)との組み合わせも良かったね。彼らは同じレーベル(Ulterium Records)なんだ。

-ファンのニュー・アルバム「Ghost Ship」への反応はどうでしたか?

M:「Ghost Ship」への評価は、レビューからネットの投稿まで、どれも素晴らしいよ。ツアーが進むにつれて、ニュー・アルバムの曲を覚えてくるファンの数が、どんどん増えていくのを実感できたのは、とても印象深い出来事だった。アルバムが出たばかりの頃は、ツアーで行っても、誰も新曲を知らなかったのに、しばらくすると、俺たちが行く前に、皆、新曲を覚えてくれているんだ(笑)

theocracy tour

-ツアーで、新作からプレイした曲は?

M:“Paper Tiger”“Ghost Ship”の2曲は固定でプレイして、あとは“Wishing Well”、”Around the World and Back”、”A Call to Arms”、”Castaway”の中から、毎晩1曲だけ選んでセットリストに入れていた。アルバムは、まだ出たばかりだから、セットリストを新曲ばかりにするのは、あまり良くないと考えたんだ。

-その「Ghost Ship」は11月に日本でもリリースとなりました。どんなお気持ちですか?

M:メンバー全員がエキサイトしているよ!メタル・ミュージックにとって、日本は昔からとても重要な国だ。俺たちも早く日本に行きたいと思っている。俺たちのウェブサイトの管理スタッフの奥さんは日本人で、彼は何度も日本に行っている。日本の素晴らしい話を、沢山聞かせて貰っているよ。

-前作「As the World Bleeds」から新作「Ghost Ship」までに5年の間があいた理由は?

M:いくつかの理由がある。一つはデビュー・アルバム「Theocracy」をリミックスして、再リリースした事。一部はレコーディングをやり直した部分もある。古いファイルを見つけ出して、あれこれ作業をするのは、ゼロからのレコーディングと変わらない労力を要したよ。
そして、俺たちは、皆、他の仕事もしているし、常にあちこち飛び回っているメンバーもいる。全員のスケジュールを合わせてバンドの予定を組むのは、まるで悪夢のような難しさだよ。バンドで、一つのスタジオに入ることすら難しいんだ。俺たちは本当に動き回っているからね!
付け加えるなら、どうやら、俺は曲作りにとても長い時間を必要とするタイプの様なんだ。好きで長く時間をかける訳じゃないんだけどね。そんな具合で気づいたら2016年だった、って事さ!アンビリーバブル(信じられない)!

-「Ghost Ship」の特徴的な強みを教えてください。

M:今回に限った話ではなく、いつだって曲が全てなんだ。そして、今回の「Ghost Ship」は、力強く印象深い曲が集まった作品だ。それぞれの曲が、聴く人を違う世界の旅へといざなう独自の世界を持っている。そして、美しいメロディと力強いリフもね。
敢えて前作までとの違いを挙げるなら、プログレッシヴな要素が少し薄まって、逆に鋭い感じが強めに出ている。特に意図的にやった訳ではなく、結果としてそうなったんだ。プロダクションはとても素晴らしく、間違いなく過去のどのアルバムよりも、「Ghost Ship」はベストな仕上がりになっているよ。

-私も「Ghost Ship」はパワフルかつメロディアスで、とても素晴らしいアルバムだと思います。そして、あなたのヴォーカルは本当に素晴らしいと感じました。

M:Wow!そう言って貰えて、とても嬉しいよ!ありがとう!なぜなら、俺は今でも、シンガーである事よりも、ソングライターである事に力点を置いているんだ。俺は最初からシンガーだったんだ。書いた曲を誰が歌う?じゃぁ、俺が歌うよ!ってね。(笑)今作では、これまでよりも、ヴォーカルにハードに取り組んだよ。歌詞の言葉の一つ一つを大切にして、ベストになるように取り組んだよ。

-曲作りはどの様に行ったんですか?

M:曲は、ほぼ俺一人で作り上げた。4年かけていろんな場所で書いてきたな。もう少し、他のメンバーと共作したかったという気持ちもあったが、時間的な制約もあったからね。メンバーが集まって、練り直した曲が2,3曲あるが、全体としては、デモから大きく変わった曲はないね。

-制作に入る前、どんなアルバムを作りたいと思っていましたか?その通りの仕上がりになりましたか?

M:このアルバムを作るにあたって立てた計画は「no plan(計画なし)」って事だったよ。(笑)「Ghost Ship」はこれまでのアルバムの中で、もっとも事前のプラン無しで作ったアルバムと言える。俺は決して「俺たちは他の何にも似ていない”THEOCRACY”的なアルバムを作るぞ!」なんて考えなかった。アルバムを聴けば、俺たちの音楽的なルーツが分かるだろう。だが、同時に、THEOCRACYらしいの曲だとも感じてもらえるだろう。それが何なのか?は俺にも分からない。俺の声と俺のメロディとコーラスと、ギターのトーンのコンビネーション、、、そんな感じかな。

-THEOCRACYはアメリカのバンドですが、音楽スタイルは、アメリカというより、ヨーロッパ的だと思います。その点についてどう思いますか?

M:その通りだと思う。俺たちの様な、メロディック・メタルはヨーロッパが主流だからね。ただ俺たちには、アメリカン・メタルの要素もあるよ。スラッシュ的な部分とかね。だが全体的には、そのヨーロッパ的だという意見に同意するよ。俺たちはアメリカのジョージア州アセンズ(Athens)という街の出身だ。だが、俺たちが「Athens出身だ」と言うと、よく、ギリシャのアテネ(Athens)出身だと思われる。アメリカのバンドっぽくないんだろうね(笑)

-あなたの音楽ルーツを教えてください。影響されたシンガー、バンドは?

M:特定の名前を挙げるのは難しいね。だが、俺が音楽を始めた頃、QUEENSRYCHEは間違いなく俺に大きな影響を与えてくれた。長い間、彼らは俺のフェイバリット・バンドだったよ。「Ghost Ship」でも、その影響を感じることができるだろう。シンガーというより、ソングライターという点で、彼らに注目していた。勿論、シンガーとしても、偉大なるシンガー、ブルース・ディッキンソン(IRON MAIDEN)、ジェフ・テイト(ex QUEENSRYCHE)、レイ・アルダー(FATES WARNING)の様になりたいと思っている。

-他のメンバーを紹介していただけますか?

M:ヴァル・アレン・ウッドはアルバムで殆どのギター・ソロをプレイしている。ジョナサン・ハインズはもう一人のギタリストで、同時に素晴らしいキーボード・プレイヤーでもある。優れたアレンジャーでもある。ジャレッド・オールドハムは、最高のベースラインで、バンドのボトムを支えてくれている。

-ドラマーの正式メンバーは決まったのでしょうか?(「Ghost Ship」レコーディングまでバンドに在籍していたショーン・ベンソンは脱退)

M:ああ!アーニー・トプランを正式ドラマーとして迎えたところだ!彼はツアーを一緒に廻って、ドラマーとしても、人間的にも素晴らしいと思ったよ。こうして彼をバンドに迎えることができて、エキサイトしているよ!

-この後のバンドの予定は?

M:アルバム・リリースに伴うライヴを、12/3に地元ジョージア州アトランタで行う事になっている。アメリカでライヴをするのは、実はそれほど多くないから、俺たちも楽しみなんだ。年明けには、もう少しアメリカでライヴをしたいと思っている。他にもいくつか検討中のプランがある。

-それでは、最後に日本のファンにメッセージを!

M:いつもサポートをありがとう!「Ghost Ship」を気に入って、楽しんでくれる事を願ってるよ。THEOCRACYの本当の夢は、日本へ行ってライヴをする事なんだ。皆と、直接会って話せる日が待ち遠しいよ!Thank You !

インタビュー:Masashi Furukawa
取材協力:Bickiee Music