4/3、FATE GEARのツアー・ファイナルとなる東京・目黒鹿鳴館ライヴの前に、ギタリストでバンドの創設者であるMina隊長に話を聞いた。
FATE GEARは昨年デビューしたばかりの新しいバンドだが、Mina隊長自身は、現在の日本のガールズ・メタル・バンドのムーブメントを作り上げたキーパーソンの一人として長いキャリアを持っている。そのMina隊長が語るFATE GEARへの思いや、表現者としての自分自身を語って貰った。

Mina


LiveLand(L):今夜のファイナルを残していますが、先週まででFATE GEARとして初めて東名阪ツアーを周った感想は?

Mina隊長(M): 3日間連続のツアーという日程は、私自身もあまり経験した事が無かったので、体力的に大丈夫かな?と思った部分もあったんですが、やってみたら意外に大丈夫でしたね(笑)。私自身も楽しくツアーする事ができました。

L:このツアーで初めてFATE GEARを見るファンも多かったと思います。

M:そうですね。大阪でも、名古屋でもFATE GEARを待っていて下さったファンの方々に、次もまた来てください!と言って頂けたので、嬉しかったです。

L: FATE GEARの成り立ちに関する質問ですが、このバンドを、ツイン・ギターではなく、キーボードを加えた5人編成にした理由は?

M: 新しい事をやりたかった、という気持ちが強かったからですね。あと、私自身が様式美系の音楽が好き、という事もあります。DRAGONFORCEの様な最近のバンドというより、RAINBOWみたいな70年代、80年代の流れをくむバンドを意識して、キーボードを入れたいと思いました。

L: ギターが一人になる事で、ライヴでのギター・プレイで変えた部分などはありますか?

M: 基本的なスタイルは変わっていません。ただツイン・ギターでハモるのと、キーボードとハモるのは感覚が違うので、その辺りは工夫しています。場合によってはキーボードに合わせるプレイも必要になりますから。

Mina

L:デビュー・アルバム「A Light in the Black」の中で、オリジナル・バージョンとして、2曲を再レコーディングした理由は?

M:まさに今、話したツイン・ギターかキーボードか、という話に関係するんですが、”Winds of Fall”は、最初に書いた時には、キーボードを入れたアレンジで書いていたんです。でも、前のレコーディングの時は、ツイン・ギターにアレンジを変える必要がありました。でも、私はやっぱりこの曲はキーボードでやりたい、という思いが強かったので、今回、キーボードのアレンジに戻して、レコーディングしました。
もう1曲の”Romancer”は、歌メロを何度も書き直しているんです。その結果として、前のバンドでリリースしたバージョンが出来上がったんですが、元の歌メロも良いんじゃないか?という思いがあり、今回、オリジナル・バージョンをリリースしたんです。これも割と評判が良くて、皆さんに気に入って頂けている様で良かったです(笑)。

L:個人的にもFATE GEARの方を後から聴いた割には、"Romancer"はオリジナル・バージョンの方が、自然な感じがしました。

M:何度も試行錯誤するよりも、最初に作った感じが一番良い事もあります。そんな感じなのかな、と思っています(笑)。

L: ”Romancer”は、歌詞も歌メロも全く違いますが、この曲に限らず、Mina隊長が曲作りをする時は、歌メロありきで作るのでしょうか?それともリフから?

M: 歌メロが先に出てきます。その後にリフを書きます。歌メロと歌詞を同時に作ることもあります。出来上がったキーがヴォーカリストに合わない時は、合わせる事はしますが、メロディの良さは大切にしています。それは、以前も今も変わりません。

L:アルバム「A Light in the Black」はギター以外はプログラミング演奏ですが、収録曲をバンド演奏で再レコーディングする考えはありますか?

M: そういった話はバンドの中でも上がっています。でも、次のアルバムは新曲のみで構成したい、という思いもあるので、悩むところです。

L: ファンもバンド・バージョンを聴きたい、と思っているはずです。

M: 遅かれ早かれ、バンドでの再レコーディングはすると思いますが、それが次のアルバムになるかは、分からないですね(笑)。

L: もう新曲は出来上がっているのでしょうか?

M: 曲作りなう!です(笑)。もう、出来上がっている曲もありますよ。

L: オリジナル・バージョンとして再レコーディングしたい曲は他にもありますか?

M: はい、あります。やはり、昔作った曲にも思い入れがありますから。ただ、さっきと同じで、まずは新曲かな。

Mina

L: デビュー・アルバムのタイトルを「A Light in the Black」とした理由は?多くの人がRAINBOWを想像するタイトルだと思いますが。

M: はい、そうです。RAINBOWです(笑)。"A Light in the Black"は私がRAINBOWを好きになったきっかけの曲でした。前のバンドを辞めて、何も無くなってしまったと感じて、凄く落ち込んでいた時期がありました。正に暗闇の中にいる状態でした。
この曲の歌詞の中に"I'm coming home"という一節があって「自分のいるべき場所に帰る」という事なんですが、私のいるべき場所はやっぱりバンドしかない、この曲を聴いてそう思えたんです。昔は歌詞はあまり気にしていなかったのですが、この曲の歌詞と今の自分が合っているな、身近な所に答えがあったんだな、と思いました。

L: RAINBOWに限らず、隊長のプロフを拝見すると、LED ZEPPELIN、PINK FLOYDなどクラシック・ロックが多いですが。

M: LED ZEPPELINとPINK FLOYDは父親の影響です。家にCDがあって聴いたのがキッカケですね。それから同年代のバンドを聴き始めてBLACK SABBATHを聴いて、そこで、初めてロニー・ジェイムス・ディオを知ったんです。それからRAINBOWを聴き始めました。

L:隊長の書く曲は、リフが際立つ曲が多い気がします。

M: リフが強くてしっかりしている曲を作ろうと意識している部分もありますが、聴いてきた音楽が自然にでてくるんでしょうね(笑)。

L: ソロに関しても派手なプレイよりも音数を抑えたプレイが印象に残ります。

M: オッサンくさいとよく言われますね(笑)。昔、MI JAPAN(音楽学校)に通っていた時に、習っていたのがHELLENの清水(保光)さんだったんです。様式美スタイルの方なんですが、その清水さんの前でギターを弾いた時に「君はビブラートが上手いから、そこは伸ばした方が良い」と言って頂きました。他の先生方からも、できる事をどんどん伸ばしたほうが良い、とアドバイスがありました。「速く弾く事なんかは、やろうと思えばいつでもできる。チョーキングやビブラートは、出来ない人は、5年やっても10年やってもできないから、良いところを伸ばすべきだ」と。それで、これを自分の武器にしよう、チョーキングとビブラートで攻めよう、と思ったんです。

L: その意味では、ツイン・ギター時代よりも今の方がプレイしやすい感じですか?

M: 確かに、ツイン・ギターだとビブラートを合わせるのは大変です。だから、ギターが一人になることで、より激しくできるようになっているという部分はあります。もちろん、ツイン・ギターも好きですよ。昨年9月にキャプテン和田さんのイベントのセッションで、IRON MAIDENとHELLOWEENをカバーしたのですが、見ていた方から「やっぱり隊長のツイン・ギターカッコよいね!」と言っていただけました(笑)。ツイン・ギターが嫌いになったという訳ではなく、どちらも好きですから(笑)。

L: 影響を受けたギタリストは誰でしょうか?

M: やっぱりジミー・ペイジですね。ジミーのリフや曲作りにやられました。正直、ソロはそれほど・・・ですが(笑)。あとトニー・アイオミとか。アイオミさんもリフの方ですよね。初期はヘヴィなスタイルでしたが、ロニー時代のBLACK SABBATHの様式美も好きです。トニー・マーティン時代も様式美で、ギター・リフのバックで、何気にシンセが入っているのが良いですね。全体的に古いですね(笑)。

L: いえ、私も好きな時代なので(笑)

M: 今、ランディVのギターを使っているのですが、それを使うきっかけはBULLET FOR MY VALENTINEのマット(マシュー・タック)なんです。彼らはメタル・コアと言われていますが、正統派の影響を受けてああいう音楽をやっていますから。やはりメタルで変形ギターはカッコ良くて、いいですよね。

Mina

L: ギタリスト以外で好きなミュージシャンを教えてください。

M: ドラマーは、やっぱりコージー・パウエルですね。私のコージーは、BLACK SABBATHからなんですが、あのツーバスにヤラれました(笑)。
ベースは、私はギターやる前にベースを弾いていた事があるんです。その時は、ニッキー・シックスとか好きでした。技術とかじゃなくてスタイルが良かった。BCリッチの変形ベースを試した事もありましたが、途中で断念しました(笑)。ビリー・シーンも好きで、MR.BIGのカバーでギターより先にベースでタッピングを覚えました(笑)。あと、X JAPANのTAIJIさんも好きです。ツイン・ギターの間でうまくフレーズを動かしている感じが良いですね。
キーボードは、、、キーボードと言って良いか分からないですが、YOSHIKIさんですね。作曲家としても尊敬しています。

L: FATE GEARとしての今後の目標、予定を教えてください。

M: セカンド・アルバムを今年中に出します。確実に!だから書いてくださっていいですよ(笑)。
ライヴは4月21日に東京・下北沢でJUNGLE LIFEのイベントに出演します。あと、まもなく発表になりますが、「NAONのYAON」のオーディション・ライヴが4月24日にあります。5月はチヴァッケン改めInzai Metal Camp、印西ではないですが千葉(市川市)で行われるイベントに出演します。SABER TIGERと同じ日です
。あと5月8日、下北沢でTHE KEY PROJECTというエンリケ(Ba)さんや、工藤哲也(Drs)さん、八重樫浩(Gt)さんのバンドと一緒に出演します。 詳細はバンドのホームページでご覧ください。

L: 最後にファンへのメッセージをお願いします。

M: 新曲も良いのができあがっていますので、楽しみしていてください。これからもFATE GEARをよろしくお願いいたします!

L: ありがとうございました。

Mina


インタビューが終わりレコーダーを止めた後、前の週に見た新宿Wild Sideのライヴの話をさせて頂いた。全体的に素晴らしい、感動的なライヴで鹿鳴館でのファイナルを期待させる内容だったが、プレイ以外で、強く印象的だったのが、隊長の機材トラブルへの対処だった。
1曲目の"Fate Gear"のギター・ソロの後、ギターの音が出なくなって隊長がペダルのセッティングを直していた。タイミング的にキメのアクションが後に続くところだったが、隊長はそのアクションの直前、コンマ何秒の所で音を復活させて、見事にアクションも決めた。そこがとても印象的だった、と隊長に伝えたところ、
「あの時は、プラグが抜けただけではなく、ペダルの電源がすべて落ちていたので、最初からセッティングをし直す必要があったんです。もちろん、あのアクションの事は意識していました。ダテに長くやってる訳ではないので(笑)。機材トラブルが起こった時に、いかにライヴを壊さずに対処できるかが重要なんです。以前、SHOW-YAのライヴで、エンディングで毎回かかるBGMが、途中で止まってしまうというトラブルがありました。その時、寺田恵子さん(Vo)が突然アカペラで歌って場をつないだんです。それが逆にとても感動的で客席は盛り上がりましたし、あまりにも自然だったので、知らない人は演出だと思ったかもしれません。それくらい素晴らしかった。こういうのって、ミュージシャンとして重要な事だと思うんです。これは是非、書いてくださいね。」
インタビュー外の会話なので録音は残っていないが、印象的で脳裏に焼き付いた言葉だった。

mina

FATE GEAR スケジュール

4/21 東京・下北沢CLUB251
JUNGLE LIFE × CLUB251 presents “Whiteboard Jungle”

4/24 東京・下北沢MOSAiC
Cute Girls Live ~ Road to NAONのYAON2016 ~
cutegirlslive.net

5/5 千葉・本八幡ROUTE FOURTEEN 
Inzai Metal Camp www.inzaimetalcamp.com

5/8 東京・下北沢CLUB251
Monsters of Rock(邪道)

その他の予定、チケット等の情報: fategear.jp/live

オフィシャル・ホームページ: fategear.jp