Bon Joviのニューアルバム「Burning Bridges」は、ジョン・ボン・ジョヴィの盟友リッチー・サンボラが不在で制作された初めてのアルバムという点で、これまでには無い話題性をもって迎えられたと言っていいだろう。

前作「What About Now」に伴うツアーはリッチー不在で行われたが、曲作りおよびレコーディングにはこれまで同様に参加していた。しかし本作の制作にはリッチーは加わっておらず、ジョンはリッチーが既にバンドを離れている事を明言している。1stシングルとなったSaturday Night Gave Me Sunday Morningのクレジットにはリッチーの名前があるが、この曲は前々作「The Circle」の時点で書かれた曲とされている。その他の曲にリッチーのクレジットは無い。曲作りの時点からリッチーが不在となった事で、アルバムにどの様な変化がもたらさせるのか? The Beatlesの「レノン・マッカートニー」Rolling Stonesの「ジャガー・リチャーズ」の如く、数々の名曲を生み出してきたジョン・リッチーのコンビネーションが存在しないBon Joviのアルバム。この事実を前向きに捉えられるファンは少数派だろう。1stシングルにリッチーと共に書かれた唯一の曲が選ばれたのは偶然ではあるまい。

アルバムを通して聴いてみると、バンドではなくジョンのソロアルバム的な印象を受けるのは事実だ。リッチー不在という事で、これまでになくジョンの気合が入ったのか、それぞれの曲のクオリティは高い。雰囲気としては、ジョンのソロアルバムである「Destination Anywhere」に近く、かつて全世界を熱狂させたハードロック・バンドとしての面影は皆無だ。しかし、ハードロック色が無いアルバムは、バンド名義でも「Lost Highway」等があった為、特に大きな違和感はない。ハードロック色が無い分、リッチーのギターが聴けない事への物足りなさも無い。気になると言えば、リッチーの印象的なコーラス・ワークが無い事くらいだろう。敢えてリッチーの不在が目立たない作風にしたのではないか?と思えるほどだ。その意味では、ツアーはともかく、アルバムの出来としてはファンの心配は杞憂であったと言っていいだろう。

ジョンのシンガー、ソングライターとしての魅力が十分に堪能できるアルバムに仕上がっている。