初めてのジャパン・ツアーが大反響を呼んだKAATO、その人気の秘密は、完成度の高いアルバム、若者らしいエネルギー全開のライヴ・パフォーマンス、スター性を感じさせるルックスは勿論だが、その音楽に滲み出るクラシック・ロックから影響も重要な要素ではないだろうか?彼ら音楽には本格派のロックの匂いがする。性別や年代を越え、幅広いリスナーを引き付けるKAATOの魅力なのだ。
彼らは、まだ20代前半の若者だが、インタビュー中に出てくるバンドの渋い事といったら、比較的その手の音楽に明るい筆者も、ちょっと追いつかない事がある程だ。KAATOインタビューの後半は、Kurt、Mikaの音楽性を中心に語ってもらった。

KAATO


KAATOの音楽性についてお伺いします。STYXの「Paradise Theatre」(81年の大ヒットアルバム)が、全ての始まりだったというのは本当ですか?

Kurt(K):ハハ!この話は何度したか忘れてしまったよ!でも本当なんだ。俺がクラシック・ロックにのめり込んだのは、学生時代に道端で拾ったボロボロのレコード・プレーヤーがキッカケなんだ。その頃、俺はパンク・ロックみたいな音楽に夢中だった。バンドの音楽性もね。レコード・プレーヤーを拾って帰ったのは、単に珍しかったからってだけでね。プレーヤーで何かかけてみたかったけど、ウチにはアナログ・レコードが全く無かったから、両親がクリスマスに・プレゼントで数枚のレコードを買ってくれたんだ。その中にあった1枚がSTYXの「Paradise Theatre」だったのさ!アルバムのジャケも気に入ったんで、聴いてみる事にした。そしたら、オープニングの”Rockin’ the Paradise(注:トラック上は60秒の”A.D.1928”に続く2曲目)が始まった瞬間、もう夢中さ!ギター、ドラム、ヘヴィなハーモニー・・・これだ!と思ったね。これこそ、俺がやるべき音楽だと確信した。そして、俺の音楽性は完全に変わり、それまでやって来たパンクの音楽性は全て忘れてしまったんだ。これが今のKAATOの音楽に繋がっているんだ。

-劇的な出会いだったんですね!Mikaはどうですか?

Mika(M):俺もほぼKurtと同じ時期にクラシック・ロックに目覚めたんだ。というか、彼のところで、一晩中アナログ・レコードを聴いているうちにハマっていったんだよ(笑)俺が好きだったのは、BLACK SABBATHのアルバム「Paranoid(70年)」だね。あとはTHE BABYSとかね。そういうレコードを聴きながら、自分の音楽性を見つけたんだ。

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K:そう、Mikaに「このレコードを聴いてみなよ!」って聴かせたら、俺と全く同じ様なリアクションでさ(笑)面白かったね!俺のウチのレコードを聴きつくした後、Mikaが彼の両親に古いロックのレコードはないか?って聞いてくれてね。それで、また、いろいろ聴きまくったのさ(笑)まるで音楽の歴史を旅している感じだったよ!楽しかったね。

-なるほど。でも、学校の同年代の他の友達とかは、どうだったんです?クラシック・ロックとか聞いてました?友達と話が合わないとかありませんでしたか?

K:そりゃ、そういうクラシック・ロックを聴いている友達は少ないよ。その点では、話は合わないけど話題は他にもあるしね。音楽の趣味に関しては仕方ないよね。STYXは偉大なバンドだけど、この10年でビッグ・ヒットを飛ばしてオンエアされまくってるか?と言えば、そうじゃないよな。BLACK SABBATHだって同じさ。もっと耳にしやすい目立つ音楽はいくらでもあるから、普通は、そういう音楽を聴くよ。俺達はクラシック・ロックの素晴らしさを、さっき言ったみたいな理由で、知る事ができたんだ。今から6、7年前にね。そして、今まで聴いてきたどんな音楽よりも、ピュアで自然で素晴らしいと思えたんだ。その素晴らしさを、皆に伝えたいと思っている。
それに、作品という観点でも、昔は、今みたいにソフトの力を借りて音楽を作るなんてできないから、膨大なプロセスを全部手作業でやったんだよ。PINK FLOYDDark Side of the Moon(狂気、73年)」とか、とんでもないよ!KAATO

-数年前のKAATOの昔の曲を聞きましたが「KAATO」とはだいぶ違いますね。そういう同世代のリスナーが少ないクラシック・ロック・スタイルに音楽性をシフトする事に抵抗は無かったですか?

M:無かったね。俺達がこういうロックをプレイする理由は、俺達がやりたいからなんだ。この音楽性にたどり着くまでに、俺達もいろんな音楽を聴いてプレイしてきた。その中から一番、やりたい音楽を選んだのが今の姿なんだ。

K:その通り、周囲がどう思うかは問題じゃない。勿論、俺達の音楽を聴いてくれる人々をハッピーにさせたい、いつだってそう思っているよ。そんな人たちの為に、俺達は常に100%の力を出している。だが、その事と、売れる為、気に入られる為に音楽性を変えるというのは別問題なんだ。わかるかい?他のバンドと同じ事をやるのは簡単だけど、そんなの退屈だよ。俺達は皆に新しい音楽を提供したい。そう思っているよ。

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-確かに、アルバム「KAATO」を聴いていると、今の時代の新譜ではなかなか聴けないサウンドがありますね。ライヴでもプレイしていた”I don’t Love You”なんかは、特に変わっている。私はとても好きな曲で、アルバムの中でも異質だと思いますが、あのアイデアはどこから?

K:あれはMOUNTAINの”Never in My Life”(Climbing!、勝利への登攀、71年」に収録)にインスパイアされた曲さ。レコーディングに参加していたドラマーのグレッグ・モローが素晴らしいプレイをしてくれている。ギター・リフ中心のダークでスローな曲が欲しかったんだ。アルバムにはキャッチーでノリのいいロック・ナンバーが多いけど、別の雰囲気も必要だと思ったのさ。それで、スタジオでグレッグに「MOUNTAINは知っているか?」と聞いた。勿論「YES」さ(笑)MOUNTAINはアメリカの偉大なバンドだからね。それでギターリフに合わせて、あのヘヴィでグルーヴィなドラムをプレイしてもらったんだ。カウベルなんかも入れてね。モロに70’sのサウンドになったよ。マジカルだったね。完璧に欲しかったサウンドになったよ。

-日本向けのボーナス・トラック(CD-R)の2曲について教えてください。

K:あの2曲は完全な新曲さ。日本に向かうほんの少し前にでき上ったんだよ。アルバム「KAATO」がルビコン・ミュージックからリリースされる事になって、ボーナストラックは無いか?と言われたんだ。でも、録音した曲は全て収録済で未発表の曲なんてないから、以前から温めてあったアイデアが2、3あったんで、Mikaと二人で一気に曲として仕上げたのさ。”Rock Blossom”はヘヴィなロック、”Brandy”はポップなロックで対照的でいいと思った。レコーディングから、マスタリングまで全て俺達だけでやったんだ。

-演奏も二人だけで?

K:そうだよ。Mikaがベースをプレイして、俺が歌、ギター、そしてドラムもプレイしたんだ。

-そうなんですね。誰が曲でプレイしているのか質問しようと思ってたんですが、、、、

K:ハハ!先に言ってしまったね。俺達だけで作った曲だよ!俺のホームスタジオで、全部レコーディングしたんだ。アルバム「KAATO」よりも、よりライヴ・サウンドで、迫力があるってよく言われるよ。

-曲のアイデアはどこから?

K:”Rock Blossom”は、日本を意識した曲だよ。歌詞は”俺達が君達の為にロックを届けに行くよ!”って内容さ。日本のチェリー・ブロッサム(桜)の季節だし、時期的にも丁度良いと思ったんだ。”Rock Bottom(UFO)”っぽい響きも気に入っている。
“Brandy”は友人の事を歌った曲だよ。その娘、ブランディは、哀しい事にボーイフレンドが亡くなってしまってね。とても落ち込んで自虐的になっていたんだ。だから、彼女を元気づける為に曲をつくったのさ。「ブランディ、俺達がついているよ!元気を出しなよ!」ってね。

KAATO

-KAATOの今後の予定について話して頂けますか?

K:まずは、あと3日間、君たちの為にロックするよ!

M:その通り!

K:このツアーの後は、ウチへ戻って曲作りを始めるよ。ボーナストラックの2曲が良い手応えだから、もう少し曲を書いて、次のアルバムを作り始めたい。あと、今年の終わりには、ヨーロッパに行く予定になっている。新しいアルバムのリリース時期は、まだ分からないけど、できるだけ早くアルバムを作って、皆に届けたいよ。そして、来年、こうして日本に戻ってきたいね!まだライヴは3回あるけど、俺はもう次のジャパン・ツアーが待ち遠しいんだ!(笑)
日本のファンには、本当に感謝ばかりさ!ハートフルな歓迎や、沢山のギフト、ライヴの声援、その他、君たちの全てのサポートにね。だから、俺達は、またすぐに戻ってくるよ!アリガトウ!

M:本当に今回のツアーは、俺達が事前に想像していた事を遥かに超えた素晴らしい経験になってるんだ。それも皆のおかげさ。感謝しているよ。本当に、また日本に戻ってくる日が待ち遠しいよ。アリガトウ!

インタビュー(2017/4/25)、写真(2017/4/24):M.Furukawa
写真☆印:KAATO提供
取材協力:ルビコン・ミュージック、KAATO JP スタッフ

KAATO


インタビューを終え、日本側スタッフに挨拶をしているところへ、Kurtがやってきて「今日は、撮影無しですまなかった。写真でも何でも必要なものがあれば遠慮なく連絡して欲しい」と話してくれた。この日は、メンバーはオフのスタイルだった為、撮影は無しで、との事だったのだ。それでは、お言葉に甘えてと、KAATOから提供して貰った写真が、前回と今回掲載されている☆印付の写真である。Thank you , KAATO ! See You Next Year !

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