2月14日。ココロオークションの地元でもある関西で、100人程のラッキーな当選者と共に初めてのアコースティックワンマンライブ企画、「CCR UNPLUGGED vol.1」が開催された。今回の会場となっているのは普段から定期的にアコースティックライブが開催されているカフェで、カフェらしいスロウなまったりした雰囲気の中、登場した4人の表情はいつも以上にリラックスした笑顔を浮かべていた。


プロジェクターを用いた贅沢な空間

椅子に腰掛けて楽器を手に取ると、オープニングに選ばれた曲は普段ならアッパーチューンとして奏でられる「ヘッドフォントリガー」。ライブハウスだとスピーカーを通す中で音圧に負けて聞こえづらくなってしまう細かいディテールまではっきりと聞こえてきて、曲が本来持っている疾走感が存分に発揮されている。オーディエンスはゆったりと椅子に座りながら鳴っている音に身も心も委ねていて、ライブハウスでの音の流れに巻き込んでいくような激しさの代わりに一緒に時間を作り上げていく暖かさがそこにはあった。

普段よりも直球の実力が試されるアコースティックだからこそ、丁寧に紡がれていく時間の流れが心地良い。観客を真っ直ぐに見つめて「ありがとう」と一言告げた後、鳴り出したのは「あの夜を越えて」。後方に設置されたプロジェクターからプロジェクションマッピングの要領で壁いっぱいに星空が広がって、曲の中で描かれている星空が目の前に広がった様な景色に息を呑む声もちらほらと聞こえた。視覚と聴覚の両方から曲の世界を味わえる、とても贅沢な空間が広がっていく。

曲終わりにVo.粟子が「ココロオークションです。今日は来てくれて有難う御座います。見ての通り、僕らはアコースティックライブが大好きです!今日のイベント名も結構気に入ってたり…。アコースティックだと曲の新しい魅力にも気づいてもらえると思うし。この曲はアコースティックの方が映えるかな?って曲や、普段はあまり演奏しないレア曲まで今日は持ってきているので、今日は最後まで楽しんで行って下さい。」と話すと、ステージを見つめるオーディエンスが期待に満ちた拍手を送った。


カバーも交えた一味違う展開

そのまま「七色のダイス」から、曲に合わせたオレンジ色の光が柔らかく会場を包み込んだ「君の魔法」、昔の曲から「手のひら」「革命前夜」と2曲続けて披露。珍しく歌詞が出てこなくなるハプニングもありつつも、『こういうアレンジです!』と会場を笑わせ、『ここで眠くないですか?って聞こうとしてたけど今ので完全に目、覚めたよね。楽しんでますか?』と問いかけた粟子に笑顔で答えるオーディエンス。とても和やかな空気が流れている。

ここでまさかのカバー曲。関西の盟友で本人達も大ファンだというLEGO BIG MORLの「love light」が披露されたのだが、他のバンドのカバーをすることでココロオークションの持ち味である柔らかい音質や、歌声の伸びやかさが浮き彫りにされていて、改めて4人が持っている音楽的な実力が伝わって来た。その上、彼らが歌うというアレンジによって曲の魅力もまた一つ引き出されていたように思う。


盟友、ドラマチックアラスカからヒジカタナオトが登場

本日はゲストとしてドラマチックアラスカからVo.ヒジカタナオトが参加していた。バンドとしても交流が深い上に、ボーカル同士でドラマチックオークションというデュオも結成してしまう位に仲の良い彼ら。ヒジカタを呼び込むと一瞬で友達同士の口調に戻って、楽しそうに話し出した姿が印象的だった。

5人で呼吸を合わせて、最初に奏でられたのはギターリフが耳に残るドラマチックアラスカの楽曲“東京ワンダー”。ギターリフの意味を説明しようとしてヒジカタが“夢の在り処”のイントロを弾き、思わぬぎこちなさに、Ba.大野に『さっきまで出来てたやん!』と突っ込まれるお茶目な一面を見せながらも、2人のボーカリストの個性がすんなりと溶け合って、一つになっていき、絶妙なハーモニーを生み出していく。

粟子の声が持つ突き抜けるような蒼さと、ヒジカタの声が持つ滲みながら周りの空気を変えてしまう柔らかい碧。相反する部分を持ちながらも共通点もある、そんな2人の声が混じり合うと、お互いの良さを引き出し合うように優しくしなやかな音になる。

こちらもドラマチックアラスカから、スクリーンに映し出された花火が曲とシンクロした「打ち上げ花火」を挟んで、2人が敬愛してやまないというthe pillowsの「Funny Bunny」。ミナホで披露されて話題を呼んでいただけに、タイトルを告げられると嬉し気なざわめきが会場に広がった。ギターの弾き癖まで完璧にコピーして、曲への愛情を存分に感じさせたこの曲。「君の夢が叶うのは 誰かのお陰じゃ無いぜ」というメッセージに歌っている彼ら自身も背中を押されてきたのだろう。

 

曲が終わると、『僕らアメトークで言うところのお寿司大好き芸人で、ircle大好き芸人なんですけど、実はもう1つ大好き芸人があって…』と唐突に話し出した粟子。2人で悪戯っぽく顔を見合わすと、せーのっ!と声を合わせて『SUPER BEAVER大好き芸人なんです!』。意外な組み合わせに思わず目を見張るオーディエンス。

『曲は…東京流星群という曲を。』と告げると、『ちょっとパワーが要るから』という言葉通り、力強い歌声を会場中に響き渡らせた。交互に掛け合いながら進めていくうちに徐々にグルーヴが強まって、サビで熱を爆発させるように叫んだ「東京流星群」のフレーズは、思いの丈を全て詰め込んだように力強かった。

5人で演奏した最後の曲は、ココロオークションとドラマチックアラスカが今のような仲になったきっかけの曲だという「蝉時雨」。アコースティックにぴったりな落ち着いたテンポのこの曲。オーディエンスは身動きも出来ずにじっと聴き入ってて、まるで音楽の力で会場の時間を止めてしまったようだ。


アコースティックでみせた新しい魅力

終盤戦は「ヒカリ」で始まり、LIVEでも鉄板と言っても差し支えないような曲が続く。ミステリアスな雰囲気を湛えた「ナゾノクサ」。そして、Gt.テンメイの弾けるようなギターリフが印象的な「ここに在る」。軽やかにカホンが鳴り響いて、座りながら身体を揺らして思い思いに音楽を感じている姿があちこちに見られる。

『何か忘れたくないことがあった時に、それでも僕らは忘れてしまうから。だからそんな気持ちは歌にして閉じ込めてしまおう、そう思っています。』そんな言葉とともに贈られたのは「雨音」。過ぎていく時を惜しんで愛おしむように丁寧に音が奏でられていて、オーディエンスを見つめるメンバーの眼差しもどこか優しげに見える。

そのまま間を空けずに、ファンへのラブレターとも言えるような「orange」。《君が居てくれたから 世界が色付き始めた》という歌詞にその場に居合わせた全員の気持ちが現れているようだ。本編最後は『今日が誰かにとってのターニング・デイになりますように!』といって披露された「ターニング・デイ」。スピーディーに駆け抜けるように終わってしまう一曲だが、集まったファンにとっての忘れられない1日を確かに飾ってみせた。

 

鳴り止まない手拍子に応えるように、もう一度今日のゲスト、ヒジカタも招いて披露されたのは「夢の在り処」。初めての企画だったこともあり、やはり緊張していたのか本編が終わって緊張感が少し解け、ハイテンションなメンバー。テンメイが口でギターソロを歌い出したり、やりたい放題な姿が和やかな笑いを誘う。

終始笑顔で演奏していた姿に象徴されるように、最後までアットホームな雰囲気で普段以上に心理的な距離の近いイベントとなった今回のCCR UNPLUGGED。これからも続けていきたいとMCでメンバーが話していたので、今回は行けなかったという人も次回開催を楽しみに待っていて欲しい。