ぼくのりりっくのぼうよみアー写

ラッパー・ヴォーカリストである「ぼくのりりっくのぼうよみ」は、現在高校3年生の17歳。早くより動画投稿サイトにおいてその卓越したリリックとラップの実力が認められ、高校2年生であった2014年の「閃光ライオット」に出演しファイナリストとなったこと、TOKYO FMの人気ラジオ番組「SCHOOL OF LOCK!」でその才能を絶賛されたことから、短期間で知名度を高めた新進気鋭のアーティストである。

「17歳」という理由で注目を集めている部分も勿論あるかもしれない。その若き才能に目を止めるフックとして、「高校生」というのは誰しもが期待感を生むワードであるからだ。しかしながら、彼なりの視点から紡ぎ出されるオリジナリティに富んだリリック、それを生かす表現力あふれるラップとヴォーカルは、ぼくのりりっくのぼうよみが唯一無二のアーティストであることを実力にて証明している。

ちなみに「ぼくのりりっくのぼうよみ」というアーティスト名は、ラップを始めた時は単純に「棒読み」であったからだという。あえて自分の未熟であった頃の出来事を切り取り、そのままアーティスト名にしてしまう彼の客観性と自虐的ユーモアは、どこか達観した印象すら受ける。

「主観」と「客観」についての同世代的解釈

ぼくのりりっくのぼうよみの優れた才能は、昨年の12月にリリースされたアルバム『hollow world』に収録されている楽曲、『sub/objective』からも感じ取ることができる。

いつしかすり替わる一人称から三人称へ

二元論でしか世界を観れないのは哀しい

全てに apathy だから魂奪われて融ける

いつしか物を見ている自分を見るようになった

人からどう見えてんのか それだけ気にしてる

なんて素晴らしい人生だろう

『sub/objective』のPVにおいて、モデルの池田エライザ扮する女子高生が歌詞で歌われている主人公であるとするのならば、この曲は高校生が学校生活で直面する「自分らしく気ままに振る舞う」か、「グループの輪を乱さずに同調する」かという葛藤を描いているように解釈できるかもしれない。PVの舞台となっている渋谷の街は言わずもがな多くの女子高生が楽しむ繁華街であり、その華やかな印象の裏、あえて陰の面といえるような、自分の主観を押し殺してまで協調的に過ごす高校生を描くというのも面白い。

「わたし」か「わたしたち」か、どちらかの意思を選択しながら生きることは、常に自分が主観と客観のバランスを気遣いながら送る人生だ。ぼくのりりっくのぼうよみは、自分の関心や意思を消して生きることに疑問を投げかけている。いや、もしかすると本人からすればただ感じたことをありのまま綴っているだけかもしれない。彼のリリックは抽象的かつ的確に、卓越した言語感覚によって世の中の現象におけるその因果を描き出す。だからこそ、多くのリスナーそれぞれの経験とリンクして共感や理解を生む。誰しもが心の中で思っていたし、または今も思い続けているような、自分自身の在り方について自分と向き合って見つめなおしたくなるたくなるような曲である。美しくも儚げな旋律に乗せられたぼくのりりっくのぼうよみのライミングは、一語一語の持つ言葉の力をリスナーに感じさせ、柔らかな歌声によってとけるように耳から入ってくる。その心地よさとリリックに込められたものを咀嚼するために、何度も何度も再生し味わってしまう魅力がそこにはある。

ぼくのりりっくのぼうよみは現在高校生である。彼の現在置かれた環境、高校生活というのは全ての高校生だった大人が羨むような良さがある。しかしながら、学校というものは独特の閉鎖的な世界であることは確かである。ぼくのりりっくのぼうよみのような俯瞰的視点を、高校生活を送る当の本人が持てること、ましてやその印象をフレーズと音楽的表現で人に伝えることができるということは稀有だ。

そんな彼は現在大学受験に挑んでいる最中とのこと。筆者としては彼の環境がより開けたものとなることで、これまで以上に様々な世界を俯瞰して、より優れた新しいリリックと楽曲を生みだしてくれることを期待している。進化を続ける若き才能を目の当たりにできている幸運に感謝したい。

ぼくのりりっくのぼうよみ、最新アルバム発売中!

「hollow world」
発売日:2015年12月16日(水)
品番:VICL-64487
価格:2000円(税別)

1. Black Bird / 2. パッチワーク / 3. A prisoner in the glasses / 4. Collapse / 5. CITI / 6. sub/objective / 7. Venus / 8. Pierrot / 9. Sunrise (re-build)