6月にリリースした、ニュー・アルバム「Apex(エイペックス)」が世界中で高評価を受けている、カナダのメロディ・パワー・メタル・バンドUNLEASH THE ARCHERS(アンリーシュ・ジ・アーチャーズ)のシンガー、ブリトニー・スレイズ(Brittney Slays)のインタビューをお届けする。結成10年という節目の年に相応しい傑作「Apex」について語ってもらった。


-ハロー、ブリトニー!お久しぶりです。元気ですか?

Brittney(B): ハロー!!ニュー・アルバムを作り始めてからノンストップで走っているけれど、とても充実していて、いい気分よ!

-そのニュー・アルバム「Apex」が、ついに世界中でリリースとなりました。勿論、日本でも。どんなお気持ちですか?

B:勿論、最高よ!やり切った、という気持ちが強いわ。アルバム・プロモーションや、その他の様々な事を、計画して、準備するのは、精神的な疲労も伴うのよ。上手くやらないと、努力の成果が水の泡になってしまう事だってあるの。いろんな不安が付きまとっていたけれど、それらを全てやり遂げる事ができて、今は最高の気分よ!

-「Apex」は前作「Time Stands Still」と基本的には同じ方向性ですが、曲のクオリティを始め随処に進化を感じさせてくれる、素晴らしいアルバムだと思います。

B:サンキュー!そう思ってもらえると嬉しいわ!その通りよ。「Apex」「Time Stands Still」の方向性を踏襲しながら、更に曲作りに拘った作品になっているの。方向性は同じでも、もっと感情に訴えるフィーリングを大切にしたのよ。全ての曲がリスナーに強く印象に残るようなパートを持つようにしたわ。あと、コーラスがキャッチーで、皆が、一緒に歌える様なメロディにする事も考えたわ。

Apex UTA

アルバムのプロダクションも「Time Stands Still」から大きく進化しているわ。「Time Stands Still」は、地元ヴァンクーバーのローカルなスタジオで録音したけど、今回の「Apex」はデンマークにあるヤコブ・ハンセン(Jacob Hansen)の素晴らしいスタジオを使う事ができた。数多くの素晴らしいメタル・アルバムが録音されたスタジオよ。それに、曲作りのプロセスも大きく変えたの。これまでは、比較的バラバラに曲作りをしてきたけど、今回からは明確なガイドラインを作って、それを各自が意識する様にした。「Apex」はコンセプト・アルバムだから、全ての曲に一貫性を持たせる必要があったのよ。

私自身は、予め、全ての曲について、この曲はどうあるべきか?つまり、何を伝えたいか?リスナーに何を感じて欲しいか?といった事を纏める所から始めたの。そして、それに従って各パートを作り上げていったのよ。今回は、最初からコンセプト・アルバムを作ろうと考えていたから、このアプローチが曲作りの方向性に統一感を持たせ、一貫性のあるアルバムができたと思うわ。

-曲作りのクレジットは全てバンド名義ですが、実際にはどの様に曲作りを進めているのでしょう?

B:UNLEASH THE ARCHERSでは、各パートは、全てそれぞれのメンバーが作り上げるスタイルになっているわ。だから、クレジットは全てバンドの名前になるの。アイデアの多くは、ギターのリフから始まるけれど、ヴォーカル・メロディが先にできる事もあるし、時にはドラムのパターンから生まれる事もある。つまり、全てのメンバーが、平等に曲作りに関与しているのよ。そういった曲のアイデアやキッカケを皆が持ち寄って集まり、リフ、メロディ、ドラム・パターンを一緒に組み立てるの。それに、誰も他のメンバーにプレイを強制したり、否定したりはしない。勿論、曲をベストなものにする為の意見を言い合う事はあるけど、最終的に決めるのはプレイする本人なのよ。自分が何をプレイしたいか?が重要なの。

-「Apex」はコンセプト・アルバムですが、どの様なストーリーなのでしょう?

B:「Apex」の曲は、それぞれが物語の章の様な形になっているの。物語の主人公はイモータル(The Immortal)といって、何千年もの間、呪いによって眠らされているの。そして、彼は、彼を目覚めさせた者の命令を必ず聞かなければならないという運命を背負っている。「Apex」の中で、イモータルはメイトリアーク(The Matriarch)によって目覚めさせられ、彼女の4人の息子を探す事を命じられた。メイトリアークは、全能の力を手に入れる為に、自分の息子たちを殺そうとしていたのよ。イモータルは、自分の意志とは無関係に、そんな残酷な命令にも従わなければならないの。アルバムでは、イモータルの目覚めから、メイトリアークとの出会い。4人の息子を探して彼女の元に届けた後、再び永い眠りにつくために、元居た山(Apex)へ帰っていくストーリーを描いているわ。

”Earth and Ashes”では、ギターのアンドリュー・キングスレーがヴォーカルをとるパートがありますね?彼が歌うのは初めてだったと思います。

B:私は、曲の中で、通常の歌声とは別にスクリーム・ヴォイスを使う事が多いの。例えば、”Awaekening”では、物語のストーリーを歌う部分は通常の声で歌っているけど、メイトリアークがイモータルに呼びかける部分ではスクリームを使っている。”Earth and Ashes”では、イモータルがメイトリアークの息子と話す箇所で、息子のパートをアンドリューが歌っているわ。このパートはスクリームにするのではなく、少し変化を付けたかったのよ。それで、アンドリューが歌う事になったの。私は、彼の歌声が、前から気に入ってたのよ(笑)実際、彼はとても素晴らしい歌を披露しているわ。彼のこの素晴らしい才能を、広く紹介出来たのは良かったと思う。彼が歌う事に決まったのは、ホントに最後の最後で、とにかくブースに入って歌って貰ったという感じだったけど、予想以上に上手くいって、驚いたくらいよ!彼は今後も機会があれば、歌う事になると思うわ。

Unleash the Archers

LtoR:Scott Buchanan(Drs)、Grant Truesdell(Gt&Vo)、Brittney Slayes(Vo)、Andrew Kingsley(Gt&Vo)、Nikko Whitworth(Ba)

-新メンバーのニコー・ウィットワース(Ba)を紹介してください

B:ニコーは、私たちの地元のバンクーバーで活動していたセッション・ミュージシャンで、前から知っていたわ。前任のカイルがバンドを離れる事になった時、次は生粋のベーシストをバンドに入って欲しいと思ったの。カイルは、本業はドラマーだったのよ。だから、もっとベースを極めた人をメンバーにしたかった。勿論、バンドとして一緒に活動が出来て、人間的にも合う人である必要があったわ。その全てを満たしていたのがニコーだったのよ!彼はとても知的で、ユーモアのセンスもあって、何よりも素晴らしいベーシストよ!彼と一緒にレコーディングするのがとても楽しみだったし、そして、その結果にもとても満足しているわ。

ヤコブ・ハンセンとのレコーディングは、どの様な経緯で実現したのでしょう?

B:彼を見つけたのはウィキペディアだったの。本当よ(笑)私は自分が好きなバンドのアルバムについて、いろいろネットで調べていたの。そうしたら、どのアルバムにもヤコブが関わっていて、これは偶然なんかじゃないって思って、彼にメールでコンタクトしたの。返事が来るのは、期待してなかったわ。でも、彼からスグに返事が来て、その後はどんどん話が進んで、こうして一緒に仕事ができたのよ。彼はとても素晴らしい人で、一緒に仕事ができて本当に光栄に思うわ。TYR「The Lay Of Thrym」 、SOILWORK「The Living Infinite」、DRAGONLAND「 Under The Grey Banner」 、MERCENARY「The Hours That Remain」、、、彼が手掛けてきたアルバムはどれも素晴らしいし、私達の「Apex」でも最高の仕事をしてくれた。私は、彼の名前がクレジットされたアルバムなら、たとえ知らないバンドでも、チェックする事にしているわ。

-1stビデオ”Cleanse the Bloodlines”について話して頂けますか?

B:ビデオに”Cleanse the Bloodlines”を選んだのは、アルバムとして「Apex」のヘヴィなイメージを打ち出したかったからよ。それに、ビデオのイメージ的にも良いものになると思えたの。実際、曲が完成する前のデモの段階から、もうこの曲しか無いと感じていたわ。それで、早々とビデオ製作の準備に取り掛かったのよ。アルバムのイメージにある鷹を上手く使いたいと思っていたけれど、それも含めて、ディレクターのリチャード・オルクが、素晴らしい働きをしてくれたわ。私と鷹が”共演”している所は、私のお気に入りのシーンよ(笑)。とてもクールな撮影だったわ。でも、撮影中はとても寒くて、大きな焚火をしなら撮影したのよ。寒さがなければ、もっと楽な撮影だったかもしれないわね(笑)。

-日本盤ボーナストラックに、QUEENSRYCHE“Queen of the Reich”をカバーした理由は?

B:以前からQUEENSRYCHEのカバーには興味があったの。それに、この「Apex」には、メイトリアークという、邪悪な女王がストーリーに登場するし、ボーナストラックに相応しいと思ったの。それに、ジェフ・テイトは、私のヴォーカルにも大きな影響を与えてくれたシンガーなの。彼の様に上手く歌えるかどうか心配な気分もあったけど、ベストを尽くして楽しめたわ。”Queen of the Reich”は彼らの曲の中で、私が一番好きな曲で、こうした形で、私達のアルバムに収録できた事を光栄に思うわ。この曲はボーナスだから、ヤコブ・ハンセンのスタジオではなく、後から地元でアンドリューの機材を使って録音したけれど、上手くいったと思うわ!

-現在のライヴで「Apex」からプレイしている曲は?

今のところ、”Awakening”、”The Matriarch”、”Cleanse the Bloodlines”をプレイしているけど、どれも良い反響よ。特に”The Matriarch”は一緒に歌いやすいから、一番、盛り上がっている感じがするわ。この後のショウでは、更に2、3曲の新曲をセットに加えていくつもりよ。

to be continued…

インタビューでは、新作「Apex」の話題の他、2015年の初来日、ワールド・ツアー、そして今後の計画についても語ってくれている。近日掲載予定のインタビュー後半にご期待ください!

インタビュー、文:M.Furukawa


Apex / UNLEASH THE ARCHERS

1.Awakening、2.Shadow Guide、3.The Matriarch、4.Cleanse the Bloodlines、5.The Coward’s Way、6.Falls Walls、7.Ten Thousand Against One、8.Earth and Ashes、9.Call Me Immortal、10.Apex、11.Queen of the Reich(Bonus Track)