オーストラリア出身の若き二人、Kurt(Vo)Mika(Ba)が中心となるグラム・ロック・バンドKAATO(カート)が、4月下旬に行った東名阪合計11回ツアー「Rock Blossom Tour Japan 2017」は、日を追うごとに話題が高まり、ツアーが終盤の東京にやって来た頃には、相当な注目が集まっていた。その東京公演から、4/24に行われた渋谷でのライヴ・レポートをお届けする。


KAATOのジャパン・ツアーが、いよいよ東京にやって来た。取材を行った東京5公演の2日目は、月曜日というライヴには不向きな曜日だったが、この夜の会場の渋谷LUSHは、満員とまでは行かないものの、ライヴ写真の撮影場所を確保するのに苦労する程の込み具合で、特にステージ前の特等席は、女性ファンで埋め尽くされており、昨今のHR/HM系ライヴでは珍しい印象を受けた。

KAATO

QUORUM、COMezik、パプリカンといった日本のバンドのステージに続くトリとして、21:30頃にステージに登場したKAATOは「Hello Everybody!!」という、Kurt(vo)のハイトーンの掛け声と共に、このツアーの直前に日本でリリースされたアルバム「KAATO」のオープニング”SDRNR“で勢いよくライヴをスタートさせた。

最初から大きなステージ・アクションとハイトーン・ヴォイスでエンジン全開といった様子のKurt、対照的に、クールな表情と仕草でベースをプレイするMika、そして今回のジャパン・ツアーの為に集まったフィリップジェレミーのギター・コンビ、ACCEPTのドラマー、クリストファーが繰り出すサウンドは、明らかにアルバムよりもヘヴィでグルーヴィだ。アルバムとライヴは全く別物、どちらにも違った魅力がある。当たり前の事の様に思えるが、なかなかそれを高いレベルで実現するのは難しい。KAATOはそれができる数少ないバンドだと感じた。

アルバムのKAATOが80’sスタイルのメロディックなグラム・ロックならば、ライヴでのKAATOは骨太な70’sハードロックの雰囲気が感じられる。しかも、ただ勢いに任せてアグレッシヴに粗くプレイするのでは無い。演奏には安定感があり、スタジオ・テイクで曲の特徴にもなっている美しいコーラス・ハーモニーをライヴでもキッチリ決めているのが素晴らしい。当然、サンプリング等ではなく、全てバンドの肉声だ。

KAATO

続く”Clean as a Whistle”、そして「ファースト・シングルをやるよ!」と言うKurtのMCで始まった”High Time“と、序盤から、観客が一緒になって歌えるキャッチーなナンバーを連発し、フロアは大いに盛り上がる。

そのまま、パーティ・ロック的な流れで最後まで突っ走るか?と思いきや、次にプレイされたのは、アルバムの中でもヘヴィ&ダークな”I don’t Love You“、全体的に派手でメロディアスな曲が並んだアルバムの中では異質とも言える曲だ。先に本サイトに掲載したKurt&Mikaのインタビューの中で種明かしされていた通り、この曲は70’sの大御所バンドMOUNTAIN(マウンテン)にインスパイアされている。この渋いクラシック・スタイルのハードロックを、見事に自分たちのオリジナル曲にしてしまう音楽センスこそが、KAATOが強みであり、このジャパン・ツアーが年代、性別を超越して支持を集めた理由だろう。

そしてそれは、次にプレイされたカバー曲、MOTT THE HOOPLE(モット・ザ・フープル)の”Rock & Roll Queen“でも同じだ。「22才の若者が、どうしてこの選曲?」と突っ込まずにはいられなかったが、「好きだからさ!」とアッサリ言い切られてしまい、逆に、これがKAATOの音楽の本質であり、魅力の源なのだと再認識させられた。

KAATO

フロアの観客のどれくらいが”I don’t Love You”や”Rock & Roll Queen”を知っていたかは定かではないが、序盤のキャッチーな3連発と比較しても、ライヴのテンションが落ちたとは少しも感じられなかった。むしろ、上半身裸になり益々エネルギッシュなパフォーマンスを見せるKurt、堅実なプレイをしながらも、観客を煽る事も忘れないMika、決してサポート・メンバーの枠に収まらないエモーショナル且つ派手なギター・プレイを決めまくるフィリップとジェレミー、そして、ACCEPTのメンバーとして、ワールド・クラスのヘヴィなドラミングを見せつけるクリストファーが一体となって弾き出す極上のハードロック・サウンドに、フロアの盛り上がりは、エンディングに向かって更に加速していった。

日本盤ボーナス・ディスクからのメロディック・ナンバー”Brandy”、更にライヴのラストに相応しい、キラー・チューン”Time Stands Still“を最高潮の盛り上がりでプレイしたバンドは、約35分のステージを終えた。

KAATO

既に時計は22時を過ぎ、平日のライヴとしては遅い時間に差し掛かっていたが、アンコールを求める声に応えてステージに戻ったバンドは、ジャパン・ツアーを意識した曲”Rock Blossom(日本盤ボーナス・ディスクに収録)”と、HUMBLE PIE(ハンブル・パイ)の”30 days in the Hole(ほら穴の30日間)“をプレイした。会場の多くのファンにはMR.BIGによるカバー・バージョンとして浸透していたであろう”30days in the Hole”は、ステージ上のメンバーも驚く場内大合唱となり、サビの掛け合いが延々続いた結果、終わってみればアンコールだけで20分、結果的に本編と合わせて60分近いステージとなった。

通常の海外バンドの来日公演の単独ライヴと比較すれば、短い時間ではあるが、物足りないという感覚は全くなく、クオリティの高いライヴを十分楽しんだ!そんな気持ちにさせてくれるライヴだった。「See You Next Year!」Kurtの言葉どおり、一回りも二回りも成長した姿を、来年、日本で見せてくれる事を、心から期待したい。kaato

KAATO Rock Blossom Tour Japan 2017 , 4/24 渋谷LUSH

1.SDRNR、2.Clean as a Whistle、3.High Time、4.I Don’t Love You、5.Rock n Roll Queen、6.Brandy、7.Time Stands Still、encore:8.Rock Blossom、9.30 days in the Hole

文、写真(2017/4/24):M.Furukawa
取材協力:ルビコン・ミュージック、KAATO JP スタッフ

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