2015年、前作「The Day of Victory」のツアーで待望の初来日を果たした、イタリアのメロディック・デスメタル・バンドDARK LUNACY(ダーク・ルナシー)が、6thアルバム「The Rain After the Snow」をリリースする。原点回帰という表現が相応しい、憂いと美しさと激しさを併せ持つ、DARK LUNACYの世界観に満ちた、素晴らしいアルバムだ。

ジャパン・ツアーのラインナップから、メンバー・チェンジがあり、ギタリスト、ドラマーが新メンバー、ダヴィデ・リナルディ(Gt)、マルコ・ヴィンダー(Dr)となっている。バンドの頭脳であり象徴である、マイク・ルナシー(Vo)は勿論不変だが、特筆すべきは、本作の音楽的なイニシアティヴを、ベーシストのジャコポ・ロッシが握っているという点だ。言うまでもなく、DARK LUNACYはマイク・ルナシーのバンドであるが、マイクはコンセプト・メイカーではあるが、そのコンセプトを元に曲を書くのは他のメンバーである。その為、マイクのバンドでありながら、メンバーの変化が他のバンド以上にバンドの音楽性やサウンドに変化を与える。シンガーが中心のバンドでは起こりやすい現象だが、DARK LUNACYの場合は、それが特に顕著に現れる。

マイクは、中心人物ではあるが、独裁者ではない様で、自分のコンセプトは重要視するものの、バンドとしてメンバーに任せる部分も多い。それが上手く機能する場合とそうでない場合がある、というのがDARK LUNACYの歴史でもあった。この「The Rain After the Snow」は、それが吉と出たアルバムだ。ジャコポが、マイクの求めるものを上手くくみ取った結果とも言える。

来日公演でジャコポのプレイを見たファンも多いだろう。非常に高度なテクニックを持つプレイヤーだが、音楽的な幅も広く、メタル以外の音楽にも精通している。前回の来日時に日本のレーベルが行ったインタビューでは、音楽的なルーツはクラシックと語っていた。もともと、DARK LUNACYはデスメタルでありながらも、クラシック音楽の要素を多く取り入れており、ピアノや弦楽四重奏のアレンジも多い。本作ではそれが顕著で、初期の音楽性に近い。カテゴリ上はメロディック・デスメタルで、それは間違ってないが、むしろアグレッシヴなデスメタル・スタイルはマイクのヴォーカルが際立っており、バンドのサウンドは美しく陰りのあるメロディアスなヘヴィ・メタル的でもある。古くからのDARK LUNACYファンは勿論のこと、普段はメロデスを聴かないメタル・ファンにも強くお勧めしたいアルバムだ。

本作の作詞は全て、マイク・ルナシーによるものだが、作詞家としての実力は相当なもので、全ての曲の歌詞が深い意味を持っている。日本盤のライナーには、各曲についてのマイク自身のコメントや対訳が入っているので、是非、歌詞の意味を理解しながら、アルバムを聴いて欲しい。

The Rain After the Snow / DARK LUNACY

1.Ab Umbra Lumen、2.Howl、3.King With no Throne、4.Gold, Rubies and Diamonds、5.Precious Things、6.Tide of My Heart、7.The Rain After the Snow、8.Life Deep in the Lake、9.The Awareness、10.Fragment of a Broken Dream、11.Prospekt(Piano version、日本盤ボーナストラック)、12.The Rain after the Snow(Piano + String Quartet Version、日本盤ボーナストラック)