DEEP PURPLE、言わずと知れたハードロックの大御所中の大御所である。デビューは1968年、なんと来年がデビュー50周年だ。そのDEEP PURPLEが2013年「Now What?!」以来となる通算20作目のオリジナルアルバム「inFinite(インフィニット)」をリリースした。日本盤の帯には「最後のアルバムと噂される」という文言があるが、ハッキリ言ってDEEP PURPLEくらいのキャリアのバンドになれば、20年くらい前、デビュー30周年あたりから毎回「最後のアルバム?」と言われるのが普通だろう。1984年に再結成したDEEP PURPLEに対し、メディアが「ハードロックをやるには年を取りすぎているのでは?」と質問していた。当時、バンドの最年長だったジョン・ロード(Key、故人)が40代半ばの頃だ。今の感覚では「メディアの意地悪な質問」という感じがするかもしれないが、当時、40才を過ぎてハードロックをプレイするなんて、ファンからしても信じがたい事だったはずだ。オジー・オズボーンが40代前半で引退ツアーをし、ロブ・ハルフォードも引退をほのめかす時代だったのだ。

それから30年以上が経ち、今のDEEP PURPLEのメンバーの写真を見れば、見た目の老いは隠せない。ミック・ジャガーや、スティーヴン・タイラーとは正反対だ。しかし、その音は紛れもないハードロック。サウンド、テクニックは今でも一級品だ。誰もがイアン・ギラン(Vo)の衰えを指摘するが、それも30年以上前から同じ事。しかし、ギランの魅力がシャウトだけではない事を、ファンは知っている。
この最新作「inFinite」には、そのギランを始め、各メンバーの凄みが凝縮されている。特にドン・エイリー(key)の活躍ぶりは、DEEP PURPLEにおいては過去最高と言える。究極のオルガニスト、ジョン・ロードの後任としてバンドに加入したキーボード職人は、RAINBOWやオジー・オズボーンのバンドで聴かせてくれた多彩なキーボード・サウンドを意識的に封印していた感があった。しかし、本作では、基本はオルガン・サウンド中心ながら、ドン・エイリーらしいシンセの音色も随処で聴かせてくれる。

全体的に楽曲がこれまで以上に70’sハードロックの雰囲気を出しているので、古き良き時代のハードロック・アルバムという言葉がぴったり当てはまる。オープニングの「これぞDEEP PURPLE!」と言いたくなるファースト・シングル、”Time for Bedlam“や、セカンド・シングルの”All I Got is You“、1971年のアルバム「Fireball」あたりに入っていそうな”One  Night in Vegas“、「In Rock(70年)」的なヘヴィ・ナンバー”Get Me Outta Here“、ドン・エイリーとスティーヴ・モーズ(Gt)が躍動するドラマチックな”The Surprising“等、曲のクオリティも素晴らしい。ハードロックの祖とも言える伝説のバンドが、現代に放った強力すぎるアルバムだ。

inFinite ( Limited Edition)

Disc 1:1.Time for Bedlam、2.Hip Boots、3.All I Got is You、4.One Night in Vegas、5.Get Me Outta Here、6.The Surprising、7.Johnny’s Band、8.On Top of the World、9.Birds of Prey、10.Roadhouse Blues
Disc 2(“Time for Bedlam” single CD):1.Time for Bedlam、2.Paradise Bar、3.Uncommon Man(instrumental)、4.Hip Boots(Rehearsal ,Ian Paice recording)
Disc2は、リミティッド・エディションのみ付属