1999年のアルバム『アルケミー』

イングヴェイ・マルムスティーンのプレイやソングライティングについては、とっくの昔に全盛期を過ぎたといわれることが多い。たしかに若さと勢いにあふれるアルカトラス時代のプレイや、ジョー・リン・ターナーと組んでいたころのキャッチーなソングライティングはすでにうしなわれているように思われる。ファンによっても、どのアルバムまで許せるかはまちまちだ。

個人的には、マーク・ボールズがもどってきてからの2枚までは輝きのある音楽だと感じている。もちろんマークといえば80年代、まだ油の乗っていた時期のイングヴェイと組んで『トリロジー』という名盤を残しているわけで、それを超えたというつもりはない。ただ、90年代末にカムバックしてからの1999年のアルバム『アルケミー』はイングヴェイのよさが大いに発揮された一枚だ。

手癖が目立つようになってはいるが、そうした音階を曲として構築してしまったインストゥルメンタル「Blitzkrieg」からアルバムは幕を開ける。マーク・ボールズの声楽的発声によるアカペラがイントロダクションとなり荘厳にはじまるヘヴィチューンの「Leonardo」へつづくと早くもノックアウトされるが、さらに「Playing With Fire」などのポップなメロディも冴えていて飽きさせない。終盤の「Asylum」組曲もイングヴェイらしさがあらわれていて思わずニヤリとしてしまう。

アルバム全体の構成にも構築美が感じられる。『アルケミー』は彼のキャリアのなかでも上位に数えていい作品ではないだろうか。