結成10周年、サード・アルバム「Celstial Nocturne(セレスティアル・ノクターン)」をリリースしてツアーを開始したばかりの、メランコリック・ゴシック・メタル・バンドeleanor(エレノア)のメンバー、Ippei J.Malmsteen(Gt、リーダー、作曲)と、Shiori Vitus(Vo、作詞)へのインタビューをお届けする。


LiveLand(L): インタビューの時間を頂きありがとうございます。レコ発ツアーの初日、東京でのライヴはいかがでしたか?

Ippei(I):  こちらこそ、インタビューありがとうございます。よろしくお願いします。
東京のライヴでは、観客の心に、メロディーを刻むことができたと思います。共演してくれた各バンド(Sincerity Green, Ghost Cries, ElupiA)のライブがとても良かったので、負けられないという気持ちがありました。そして、彼らからの影響で、自分たちも良いパフォーマンスを披露できたのではないかと思います。

L: 新作「Celestial Nocturne(セレスティアル・ノクターン)」からの曲をプレイした手応えはいかがでしたか?   

I:  新作の中から、シンプルかつストレートに響く曲を中心に選曲しましたので、初めて聴いてもらった曲にも関わらず、リアクションが大きかったように思います。特に"Defying Gravity"はPV公開の効果は絶大でした。

L: 新作は完全再現をして欲しいくらい良い曲ばかりなので、他の曲も是非、ライヴで聞きたいと思いました。9/3東京のライヴでは新作からは5曲でした。今後ツアーの中で新曲の割合を増やしたり、別の新曲に入れ替える考えはありますか?

I: 新曲はできるだけ多くやるつもりです。今回披露できなかった曲もいつでもやれる状態にあります。選曲はいつも本当に悩みますね。ファンの方から「この曲をやって欲しい!」との声がいくつも届いています。その声に少しでも応えたいと思っていますので。アルバムの完全再現は、目標の一つとして掲げています。

L: 是非、いつか完全再現をお願いします!さて、その新作についてファンからは、どんな反応がありましたか?

I:  リリース後、間もないからなのでしょうが、素晴らしい、良い、という評価以外は届いていません。即効性と言いますか、聴いてすぐに作品に惹き込まれる方が多いようです。

eleanor / Ippei

L: eleanorの音楽をまだ良く知らない読者の為に、eleanorの魅力とメランコリック・ゴシック・メタルという音楽について、語っていただけますか?

I: 自分達の音楽を一言で言い表すならば「メランコリック・ゴシック・メタル」というのは最適な呼び方であると考えます。誰かの影はなく、誰の色とも異なり、誰とも交わらず、孤高の位置から完全オリジナルな世界観を描いています。

L: .この様な音楽を志向したキッカケはなんでしょうか?

I: 僕はハードコア寄りのバンドを元々やっていて、メランコリックなメロディーも兼ね備えている音楽をやっていたのですが、同一線上で進化を遂げ、独自の音楽スタイルを築くべく、Shiori Vitusと共にeleanorを始めたのです。

L: 新作で表現したかった事はどんな事でしょうか?前作から変えたり、進化させたかった点、逆にこだわって変えなかった点など、あれば教えてください。

Shiori Vitus(S): 楽曲がより洗練された為、それに見合うだけの歌唱をしないといけない、ということを一番に考えていました。特に中低音域の声の出し方や、歌い回しについて試行錯誤し、納得いくものを練り上げてからレコーディングに臨みました。前作「Breathe Life into the Essence(2013年)」と聴き比べて頂ければ、その試みが成功していることを感じて頂けるかと思います。
歌詞は前作に引き続き、全て日本語で書いています。ShioriVitusというシンガー・作詞者の個性を出すにあたって、大切にしていることですので。

eleanor / Shiori

L: 今後も、日本語の歌詞を続けて行こうとお考えですか?

S: 1stアルバム「A Circle of Lament(2008年)」では1曲を除き、全て英語で歌詞を書きました。メタルバンド=英詞という固定概念を持っていた為です。 しかし、英語の歌詞は言葉だけが上滑りしているような感覚が常にありました。簡単にいうと「気持ちが込められない」ということですが、ただ言葉とメロディーをなぞっているだけで、本当に書きたい言葉を書いてないし歌っていない、というジレンマを感じていました。そこで、2ndアルバム作成時には、全曲日本語の歌詞にしようと決めたものの、最初は少なからず抵抗がありました。
とはいえ書き進めていくうちに、自分が表現したいことがすらすらと書けることに気づき、いざレコーディングに入った時には、今までにない手ごたえを感じながら歌うことができたことを覚えております。
私の書く歌詞は、どちらかと言えば小賢しくてひねくれているので、日本語以外の言語では表現できないということもありますし、ひいてはこれがeleanorの個性の一部でもあるので、今後も日本語詞を書き続けます。

L: 作詞にあたって、作曲者IppeiさんからShioriさんに、歌詞の内容について、リクエストはしているのですか?逆に、Shioriさんから、こういう事を歌いたいので、こんな感じの曲が欲しい、といったリクエストがあったりしますか?

I: 歌詞はいつも後から書いて貰います。過去に一度だけ、歌詞のイメージを伝えたことはあります。逆に、こんな感じの曲を歌いたいというShioriからのリクエストはもらいます。挑戦意欲が沸くので、そのリクエストは好んで受けています。

L: メロディラインに、通常のHR/HMには無い、日本のJ-POPと言うより70-80年代ニューミュージック的な雰囲気が、私には感じられるのですが、その辺りの音楽は、Ippeiさんは意識していますか?

I: ニューミュージックとは懐かしい響きです。子供の頃ラジオから流れる音楽をかたっぱしから聴き、大衆音楽に目覚めましたので、影響は受けているはずです。ちなみにJ-POPと呼ばれるものは「好きじゃない」を通り越して嫌悪感を抱くものもあります。

L: .バンドは2013年にベルギーのフェスに参加していますが、今後も海外進出を意識していくのでしょうか?その時も歌詞は日本語にこだわっていきますか?私個人的にはeleanorの音楽なら日本語の歌詞でも海外で勝負できるのでは?と感じています。

S: ありがとうございます。私もそう思います(笑) 海外、特にヨーロッパのメタルシーンにはずっと憧れを抱いていますので、海外でのリリースやツアーはもちろん意識しております。もともと英語で歌詞を書いていたのも、世界で勝負することを目的にしていたからです。
が、前述の通りうまくいかなかったので、活動のフィールドが国外であっても、堂々と日本語で歌います。ですが、タイトルだけ英語にしていることは、一応海外向けへの配慮の様なものです。歌詞の内容はタイトルになぞらえたものなので、意味は分からなくとも、どんなことを歌っているのかを連想してもらえたらいいな、と思いまして。

eleanor / Shiori

L:  演奏面の質問です。曲は全てIppeiさんの作曲ですが、リードギターはNaoさんの割合が多いですね?NaoさんとIppeiさんの分担はどんな感じで決めていくのですか?

I:  Naoの割合が多かったですか?ツインリードが大好きなので、それも多いですよね。タイプの違ったギタリストが二人いるので、状況に応じ、得意な方がソロを弾くという感じですね。アルバムのブックレットにリードギターをどちらが弾いているか書いてありますので、ご参照下さい。

L: ギター・プレイヤーとしてNaoさんとIppeiさんの違いは?

I: Naoは僕よりずっと巧く華やかで「これがギタリストのプレイだ!」というギターを弾くのが得意です。小ワザも効いています。僕はもっとメロディーありきで、口ずさむような、口笛で吹けるようなギターを弾くのが好きです。

L: 名前はIppei J.Malmsteenですが、イングヴェイ J.マルムスティーンと違って、あまり弾きまくりのタイプではないですね?少し意外でした。

I: このIppei J.Malmsteenという名前は分かってくれる人のための言葉遊びというか、ただの冗談です。速弾きネオクラを期待した方からすると、ガッカリするでしょうね。ただ、イングウェイはAlcatrazz時代から、ジョー・リン・ターナーがヴォーカルをやっていた頃までは全ての曲が大好きでした。アルバムは 「Trilogy」が一番好きです。(イングヴェイの)元夫人のERIKAさんが、eleanor同じルビコン・ミュージックからCDをリリースしていることにも喜びを感じています。
(注:イングヴェイの元夫人ERIKAの最新アルバム「Deaf, Dumb &  Blonde」も、今年、ルビコン・ミュージックからリリースされている)

L: ベースラインやその他のアレンジはどの様に作り上げていくのでしょうか?

I: 僕の家に集まって音楽製作ソフトを動かしながら練っていきましたね。スタジオでリハーサルをしながらアレンジすることは無いです。アルバムをリリースしてから、初めてスタジオでリハーサルを開始しました。

eleanor / Ippei

L: ドラムはアルバムにはCarlosさんがクレジットされていますが、東京のライヴではドラマーはNo Limited SpiralのKegoiさんがサポートでしたね?今は正式ドラマーは不在という事ですか?

I: Carlosは個人的な都合でライブ活動が出来ない状況にあります。彼が再びステージに立つまで時間を要しますが、今もメンバーとして僕らと共にバンドの運営に加わっています。Kegoi氏はその困った状況を救うべくメロデス界から駆けつけて来てくれたヒーロー的存在です。彼がいなければ今頃僕らは悲惨な状況に置かれていたでしょう。

L: レコーディングのCo Producerとしてクレジットされているのは、Bellfastのリーダー/ベースの松本周二さんですね?松本さんは今回、どんな役割を担っていたんでしょうか?

I: セルフプロデューススタイルに限界を感じていたので、彼に依頼しました。楽曲を書き終え、アルバム収録曲が揃った後の工程全てに関わってもらいました。曲のアレンジとかレコーディングとかミックスですね。迷った時は必ず松本氏に相談し、彼の判断を仰ぎました。ミックススタジオで何度もマジックを起こしてくれましたね。楽曲こそ我々eleanorのものですが、あらゆるところに彼の魂が込められた作品になりましたよ。

L: 前作と比較すると、サウンドのプロダクション面でも新作は大きな進化を感じますが、いかがでしょう?レコーディング自体の方法で変えた点は?

I: 変えたのはギターの録り方だけです。今回はアンプの音をマイクで拾って録音しました。他は前作とほぼ同じやり方です。プロダクションの進化については、Co-Producer松本氏が関与してくれたことが大きいです。また、一度完成した作品に、ルビコン・ミュージックの社長からダメ出しを頂き、マスタリングをやり直したことも音質の向上につながっています。Leaves’ EyesのAlexander Krullがマスタリングをやってくれたのですが、やり直しの件はものすごく言いづらかったです。

L: 新作ではKanako Akiraさんのヴァイオリンが、効果的にフィーチャーされていて、印象的なメロディも奏でています。ライヴでヴァイオリニストと共演、といった構想などお持ちですか?

I:彼女は我々とは全く違うフィールドで活躍する演奏家です。多忙な方ですが、猛アプローチで数年来の希望が叶いました。メタル系の音楽について全く無知だったので、メロイックサインの出し方から指導するのが大変でした。渡した楽譜を忠実に弾いてもらったのですが、美しい音色に録音スタジオは溜め息があふれましたね。1曲除き、全ての曲でヴァイオリンを使用しています。近い将来はヴァイオリニストとの共演を望んでいます。

L:  今後のバンドの予定について教えてください。

I: 今年はとにかくライブの回数を重ねる予定です。出演依頼をいただいたライブは日程が重ならない限り、ほぼ全て受けました。まだ追加ブッキングがあってもいいかなと思ってます。

L: eleanorは結成10年となりました。今後のバンドの目標について教えてください。

I: とても幸せな10年でした。しかし、ライブで口が滑り「あと45年やり続ける」と言ってしまったので、それに向け体調管理をしっかりやっていきたいです。バンドとしては「今」を超える作品作りを死ぬまでやっていきたいです。

L:最後にファンへのメッセージをお願いします

I: 「A Circle Of Lament」、「Breathe Life Into The Essence」、「Celestial Nocturne」次の作品タイトルをお楽しみに!インタビューありがとうございました。


このインタビューは、当初、Ippeiのみと行っていたが、途中「質問により適切に答えられる様に」との配慮で、Shioriが一部の質問に急遽参加してくれた。発言の比率がIppei中心となっているのはその為であり、決して、Ippei J.Malmsteenがイングヴェイばりにシンガーを押しのけていた訳ではない事を、最後に付け加えておく。

eleanor Celestial Nocturne ツアー9/3東京公演のライヴレポートを近日公開予定です!ご期待ください!

Ippei

Celestial Nocturne TOUR 2016

10月9日 (日) 大阪・心斎橋パラダイム
10月22日 (土) 京都・四条MOJO
11月26日 (土) 名古屋・今池3STAR
12月3日 (土) 大阪・心斎橋パラダイム
12月23日 (土) 名古屋 ・HOLIDAY NEXT

チケット、その他詳細:オフィシャルHP