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カナディアン・メタル期待の新星UNLEASH THE ARCHERSが、3枚目のフルレンス・アルバム「Time Stands Still」で、ついに日本デビューを果たした。このバンドの特徴は何と言っても5オクターブとも言われる声域を持つ女性シンガーのブリトニーのヴォーカルだ。男性ギタリストが「グロウル」と呼ばれる”デスヴォイス”を担当しており、日本では未発売の前作までは、男女のツインヴォーカルの様な役割分担であったが、本作ではブリトニーのヴォーカルがメインで、グロウルはコーラスというバランスになっている。前作から本作の間でメンバーチェンジがあり、曲作りのプロセスが変わったのだろう。曲調も大きく変化している。いわゆる超高速リズムといったデスメタル的な展開が殆どなくなり、マイケル・キスク時代のHELLOWEENを思い起こさせるメロディアスなパワー・メタルが中心となっている。シングルを意識したキャッチーでライヴ栄えする曲もあり、マニアックなバンドからの脱却を果たしたと言える内容だ。ブリトニーの歌唱力とルックスは、女性メタル・シンガーのニュー・ヒロインの資質を十分に持っている。

充実した本作の効果は既に結果として現れており、バンドは老舗のメタル系レーベルとして有名なオーストリアのNapalm Recordsとの契約に成功している。Napalm Recordsは欧州全体に配給網を持っている為、バンドのステップアップにはうってつけだ。さらに日本での契約を勝ち取っただけでなく、なんとアルバムリリースに合わせた初来日公演まで決定した。日本は東京と福島県いわき市の2公演、その後は中国をツアーする予定となっている。そして9月からはHIBRIAのサポートとして北米を回るスケジュールが発表されている。本作の音楽性はHIBRIAに近い部分もあるので、ファンにはたまらないカップリングとなるだろう。ちなみに本作の日本盤ボーナストラックにはHIBRIAのユーリ・サンソンがゲスト・シンガーとして参加している。

過去のトップバンドにはブレイクするきっかけを作る「重要な一枚」となるアルバムが必ず存在している。マイケル・シェンカーの才能が開花したUFOの「Phenomenon(現象)」、METALLICAの「Master of Puppets(メタル・マスター)」、PANTERAの「Cowboy from Hell」、DREAM THATERの「Images & Words」等だ。この「Time Stands Still」がこれらのアルバムの仲間入りをするか?その可能性は大いにあると期待させられる内容のアルバムである。