mol-74は、8mmフイルム映画の映画のような音楽

mol-74は武市和希(Vo,Gt,key)、井上雄斗(Gt,Cho)、坂東志洋(Dr,Cho)からなる京都出身のスリーピースバンドだ。LIVEを見た時に繰り返して印象付ける訳でも、四つ打ちを駆使してる訳でも無いのに彼らの音楽はやけに頭に残る

mol-74の音楽は一曲一曲が8mmフイルム映画のようだ。CD越冬のマーチの2曲目のグレイッシュを聴いてると、Vo武市の声に軽やかなリズムが絡まり合って独特の浮遊感を生み出しているし、3曲目のヘールシャムの底に流れている心地よい疾走感は光が流れるように音の流れに耳を奪われてしまう。そんな中で、1番mol-74の持ち味が活かされているのは5曲目のアルカレミアだ。アルペジオの様なギターが鳴り出して、キーボードの優しい重低音に包まれる。それからVo武市の声がふんわりと響き出す。諦めと希望が溶け合った様な歌詞は聴き終わった後の心地良い幸福感に繋がっているし、何よりもこの曲は生で聴いた時の開放感が強いのだ。音のスケールが広がっていくにつれて周りに人が居ることも忘れてしまうくらいにステージに心を奪われてしまう。最後の音が鳴り終わってもまだ、心地良い余韻に包まれたままだった。

mol-74の音楽には純度の高い静けさが閉じ込められている。音が鳴ることによって周りの空気が止まって、ひとりぼっちの空間で静けさが訪れるのだ。それはボーカルの武市の声が持っている透明感から来るのかもしれないし、スローリーに刻まれるリズム感や、落ち着いたメロディーから来るのかもしれない。

彼らの音楽を聴いて思うことも見える景色もそれぞれだと思う。これからの寒い朝にこのアルバムを聴いてみるのも良いのでは無いだろうか。凛とした冷たい空気に彼らの声はとても良く似合うはずだ。