ブルース・ディッキンソンのソロアルバム

2016年のワールドツアー開催と、それにともなう4月の日本公演が発表されたアイアン・メイデン。ヘヴィメタルというジャンルを代表するバンドのひとつとして、その数々の名盤が必聴とされている。しかし、フロントマンをつとめるブルース・ディッキンソンのソロアルバムも力作ぞろいであることはあまり知られていない。

パートナーとして、名プロデューサーでありギタリストでもあるロイ・Zを起用していることが成功の要因のひとつだろう。といっても、ブルース・ディッキンソンに見出された頃の彼はまだ無名の存在だった。自らのバンド、トライブ・オブ・ジプシーズを率いてはいたが、バックバンドとして参加したブルースの『ボールズ・トゥ・ピカソ』が発売された1994年から2年後にやっとメジャーデビューすることになる。

ロイ・Zの生み出すローチューニングのヘヴィなギターリフは、アイアン・メイデンのツインギターを生かしたサウンドとは対照的だ。アイアン・メイデンには、リーダーのスティーヴ・ハリスという名ベーシストがいるため、そこに重なる低音域のギターフレーズは少なくされてもいる。ロイ・Zの場合は、むしろベーシストがいなくても成り立ってしまうぐらいにヘヴィなギターだ。

当のブルース・ディッキンソン本人はいつでも彼らしい歌唱を披露し、特に歌い分けているようにはおもえないのだが、それぞれの魅力を持って聞こえてくるから不思議に思う。2015年の初めには、癌の治療にかかっていたことを告白しファンを心配させもしたが、ツアーにはいつも通り彼の操縦する飛行機で回るというから、そのバイタリティーを今後も楽しみにしたい。